Rei-sN

その00   オープニング

製作 越後屋光右衛門雷蔵


「ここは・・・どこだ?・・・・・」
 シンジは朦朧としながら眼を覚ました。彼は第**使徒を迎撃中に初号機が暴走、彼のコントロールから外れ気を失っていたのであった。
 彼にとって暴走は不幸中の幸い、気を失ったお陰で使徒を味わうという事を免れたのだから。
暖かく懐かしいような感覚のある水の中を、カナズチのくせにスイスイ移動している。吸い寄せられていると言った方がいいような気もするが・・・・・
「なにかが・・・呼んでる・・・・」
 彼は薄暗い水の中を、彼方にうっすら見える光に向かって泳ぎ続ける。
 辿り着き、そして光に吸い込まれるように姿を消した。
 彼は一瞬眼を閉じて、再び開けた時。
「・・・・え?・・・・え?・・・・・え?な、何?・・・・・・う、うわあああああああっっっっっっっっっっっ・・・・・・・・」
 
 

 碇シンジがシンクロ率400%を記録し、初号機に取り込まれて後行われたサルベージ現場。
「プラグからLCLが排出されますっ」
 マヤの声と同時にプラグの扉が開いてLCLが流れ出てきた。
 LCLと共に、シンジのプラグ・スーツも一緒に・・・・・
「うわああああああ・・・・・・・」
 シンジのスーツを抱きしめ、号泣するミサト。
「返してよお、シンジくんを返してえっ・・・・・」
 ミサトの絶叫がケージに木霊するのだった。
 
 
「大変な事になったな・・・・・」
 加持リョウジは誰にともなく呟く。目の前には憔悴しきった葛城ミサトが座っている。
 眼は虚ろに光を失い、加持の言葉への反応を数テンポ遅れる有様だった。
「・・・・・ええ・・・・・・」
 第三新東京市、山間に建つ高級ホテルのティ・ラウンジ。
「司令はどうするつもりなんだろうな?」
「司令は初号機を再度ダミー・プラグでの運用を模索するらしいわ・・・・・息子が消えたってのに・・・エヴァの方が大事なのね」
「いや、俺が言いたいのは・・・・・・」
 加持はゆっくり立ち上がり、ミサトを促して部屋へと向かうのだった。
 
 
「うわあああああっっっっっ、綾波っ、なんでそんなカッコしてるんだよっ」
 光に吸い込まれたシンジが最初に眼にしたのは、丸裸の綾波レイだった。
 レイはうっすらと微笑みながらシンジの身体にまとわりついていた。レイらしからぬ行動ではあるが、レイは自分の身体をシンジの身体に擦り寄せ密着しようとする。
 シンジは否が応でも眼が行きそうになるレイの裸体から視線を外そうと、あさっての方角を向く・・・・が。
 そこにも裸体をひけらかすレイがいた。
「はあ?」
 シンジは自分にくっつくレイに視線を戻した。
 確かにレイである。
 再びもう一人のレイを見る。
 こちらは満面に笑みを浮かべながらシンジに接近している。
 呆然と周りを見れば、更に数人のレイたちが撒き餌に群がるお魚のように、シンジめがけて泳いできていたのだった。
 シンジに辿り着いたレイたちは、ある者はシンジの頭を優しく抱きしめ、またある者は脚に縋り付き愛おしそうに頬ずりしている。はたまたある者は自分の身体をシンジに触れさせようと手を取りまさぐらせている。
「・・・・・そうか、夢だな・・・・・・」
 男ならば、正に夢の世界であろう。
 絶世の美少女綾波レイに密着出来る。それも裸で。ただの裸ではない。裸のレイが大群で押し寄せているのだ。
 夢と思わねば、シンジの脆弱な神経は持たないだろう。
(夢なら・・・いいか・・・・・)
 彼はレイたちと戯れる気になった。
 ふと見れば、シンジの視界から逃れようと背後ばかり廻る人影が一つ。
 
 
 山間のホテルの密会の翌日。
 加持リョウジは姿を消した。彼は自発的に姿を眩ましたのだった。
 前日の葛城ミサトの様子を見て、自分の集めた資料を託すには時期尚早と判断したらしい。
 一方、葛城ミサトはいまだに失意のどん底に沈んでいる。本部に出勤してきても幽霊のようにただ漂っているだけといった有様である。
 そんな様子を見ていた赤木リツコ博士は、ミサトを引き連れドグマへと降りていった。
 彼女はレイの代わりにゼーレに送られたというゲンドウの行動への怒りのため、我を忘れていたのであった。
 魂の入ったレイを殺す事は補完計画に支障をきたすため、どうしても出来ない事であるがために、代わりにレイの容れ物を破壊せんと画策しているのである。
「あなたが知りたがっていた秘密・・・・少し教えてあげるわ。なぜシンジくんがエヴァの中に消えたのか・・・もね」
 幽鬼の如く彷徨っていたミサトも、シンジというキーワードに釣られてリツコに付いていったのである。
 ドグマへ降りて、道すがら説明を受けて辿り着いたのはレイのクローンニング・プラント。
スイッチを操作して照明を灯す。
「どう?」
 そう言いながらミサトの反応を見るリツコ。
 ミサトは異様な表情を浮かべている。
 そう、一瞬驚愕の顔を、そして泣き笑い。次第に顔が引きつって怒りの形相に変わる。
「何やってんのよっっっ、あんたはっっっ」
 リツコは予想外のミサトの反応に、恐る恐る振り向いてみた。
 そこには、困惑した顔で多数のレイを身体にまとわりつかせた碇シンジが漂っているのだった。
 
 
 夢見心地でレイたちと戯れていたシンジは、ふと視界の片隅に背後へ廻ろうとする人影に気が付いた。
 何気なく首だけ振り向くと、レイにしては大柄な身体が丸くなって俯いている。
 髪も黒い。身体付きもふくよかでどう見ても14歳には見えない。
「綾波じゃないのかな?・・・・ま、夢だからなんでもありなんだろなあ・・・・」
 シンジの呟きが耳に入ったのか、黒髪に人物はゆっくり顔を上げて口を開いた。
「夢じゃなかったりするのよ、シンジ」
 照れくさそうに笑う女性を見てシンジは感じた。
「綾波が、大人になったらこんな感じ・・・・もしかして、母さん?」
「てへへ・・・・・」
 どう反応したらいいのか分からずに硬直するシンジに、どこからか怒鳴り声が聞こえた。
 
 
「リツコ!!早くそのアンポンタンを引きずり出しなさい!!」
 ミサトには、もうすでにレイの秘密よりもシンジの生還の喜びと、自分の心配をよそにのほほんとした顔でレイと戯れていたシンジへの怒りの方が重きを成していた。
「え?ああ、う、うん・・・・・」
 リツコはアタフタと隅から梯子を持ってきて立てかけて、水槽の上の扉を開ける。
「シンジくん、上がって」
 そう声を掛けてまんま下へ降りてしまうリツコ。
「リツコ、開けっ放しで平気なの?」
「ん?ああ、その他のは出てこないから平気よ」
 リツコはシンジに渡すタオルを出して振り向く。ミサトがおかしそうに言った。
「一列に並んじゃってるけどね」
 出てきたシンジの後ろには、レイたちがズラリと並んで微笑んでいるのであった。
 
 

「な、なんで・・・こんな事に・・・・・・」
 リツコはもう絶句するしか方法が無く、思考は固まり、表情も固まり・・・つまり硬直状態に陥っていた。
 水槽の中のレイたちには、元々魂は存在しない。
 それ故、魂を持ったオリジナルレイのパーツたりえたのである。
 魂を持たないレイたちも本能によって動く事は出来る。が、自ら行動を起こすような思考を伴った動きを見せる事など今まで一度としてなかった事なのだ。
 つまり、自ら行動出来るという事は、何らかの理由で魂が入ったとしか考えられないのであった。
「シンちゃ〜ん、どうゆ〜事か説明出来るかなあ」
 硬直したリツコに代わり、ミサトがシンジに問いかける。
「それが・・・ぼくにも何が何だかよくわかんないんですよ。母さんの方が説明できそうだから、母さんに聞いてください。ミサトさん・・・・・・」
「母さん?」
 シンジの母と言えば、エヴァ実験中に亡くなられた言わずと知れた碇ユイ博士。
 あの碇ゲンドウ司令の妻にして、生体工学の世界的先駆者。
「だって、ユイ博士は昔に亡くなっているじゃ・・・・・・・」
 その時、シンジの後ろからヒョッコリ顔を出す人影が。
「初めまして〜、いつも宅のシンジがお世話になって・・・・・・母のユイです。よろしくお願いします」
「は、はい〜。葛城ミサトです。こちらこそお世話になりまして・・・・・・・って、どうしてえ〜〜〜〜〜」
 思わず返事を返すミサトであったが、やはり驚愕の顔をする。
「とりあえずタオルと何か着る物が欲しいんだけど・・・・・・」
 シンジ、ユイ以下レイたちは素っ裸で突っ立っていた。
 
 
「こんなのしかありませんでしたあ・・・・・・・」
 ミサトはどこからか大きめのダンボール箱を持って現れた。
 箱の中には白衣がギッシリ詰まっている。サイズはLサイズだった。
「すみませんね。ああ、これなら丁度いいわ」
 ユイは身体をタオルで拭きながら、シンジ以下レイたちに手渡している。
 結局、LCLから出現したのは、ユイ、シンジ、そしてレイが5人の総勢7人。
「え〜博士、説明していただけますか?」
 ミサトが怖ず怖ずと声を掛けた。ちなみにリツコは石化したままだ。
「簡単に説明するわね。わたしは昔エヴァの実験でエヴァのコアに吸収されてしまったの、今回のシンジと同じようにね。それからずっと、ほとんどコアの中で眠っていたのよ。時々起こされたりしてけどね」
 ミサトはハッと顔を上げる。
「もしかして、エヴァの暴走が?・・・・・・」
「そうなのよ。もう、シンジが可哀想で可哀想で見ていられなくって。それが原因で暴走してしまって、今回シンジが400%のシンクロ率で吸収されたのは、わたしにも責任があるのよ。壊れそうな子供をそのままにはしておけないから、使徒から貰ったS2機関でコアからシンジを出すついでにわたしも出てきた訳」
「しかしま、なんでシンジくんをここに出したんです?」
 ミサトはレイのクローンニング・プラントを指さして言った。
「間違えたの」
「間違えた?」
「そう。単純に間違えただけ」
「あんまりタイムリーだったもんだから、意図的な事なのかと思った・・・・・・博士は、レイの件には?」
「わたしはまったくタッチしていないわ。でも、レイちゃんも初号機に乗ってるし、シンジの記憶や水槽の彼女たちの構成なんかでおおよそ分かったけどね」
 ユイの話の区切り目を狙って、ミサトは言葉を挟み込む。
「クローンの目的やらなんやらは取りあえず後にして・・・・・・リツコはさっきシンジくん以外は上がって来ないって言いましたが、これこの通り何を命令されるでもなく上がって来ました。これは動き出す何らかの要因があったのでは?」
「そうね。おそらくクローンの目的はダミー・プラグでしょう・・・・・これは想像でしかないけど、エヴァの起動にはエヴァがパイロットが搭乗していると認識すればいいはず。ならば心を持った魂は不要、むしろ無い方がいい結果が得られると思うわ。だから水槽のレイちゃんたちは魂を持ってはいなかった。故にコアから戻ったシンジに強力な魂のエネルギーを感じ取ってベタベタくっついていたんじゃないかしら」
「魂のエネルギー?」
「空っぽのガフの部屋を埋めてくれる位のエネルギー・・・・・それが欲しくて水槽でシンジに擦り寄っていたのかもしれないわ」
「とすると・・・・・・」
「動き出したって事は・・・・魂が入ったって事なんでしょうね。シンジから魂を分け与えられて」
「むう〜〜〜〜」
 ひとしきり唸ったミサトは、クルッとシンジに向き直り。
「魂を入れるとはぁぁっっ!!いかなる行為かぁっ・・・・まさか、いかがわしいあんな事やこんな事を・・・許せんっっ」
 ミサトはシンジの首っ玉を掴んで怒鳴る。
「な、なに考えてんですか。ぼくはただ浮いてただけですよ」
 シンジは憮然と言う。
「まあ、いやらしげな事出来るとは思ってはいないけど・・・・・・・さて、このレイたちどうしましょうかね」
 と、ミサトが態度を豹変させて言ったとたん、
「「「「「・・・・・あなたに決めてもらう必要はないわ・・・・・」」」」」
 声を揃えてレイたちがしゃべった。
「おぅぁぁっっ、しゃ、しゃべったあっっ」
「・・・・・しゃべりますよ、そりゃ。オリジナルと一緒にしないでください・・・・・」
 憮然とした(感じ)で、言うレイたちであった。

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