Rei Return Rebirth

その参

製作 越後屋光右衛門雷蔵


 
 困惑。それが私があの娘を初めて見た時の感覚だった。
 それほど大きくない、小柄と言ってもいい位の身長だったが、スタイルはと言えば奇跡のオンパレードと言っても過言ではなかろう。
 大きめの服を纏って身体のラインを目立たなくしようという意図はわかる。しかし、それはどうも無駄となっている様子だった。ムッチリと存在感を誇示する胸の隆起は、形を崩さずかつ淫靡に揺れていた。服に隠されたウェストは、かなり細いように見受けられる。
 美形。一言で言うには惜しすぎる。表情が乏しいのが欠点だが、そんな事を補って余りあるほどの美貌だ。儚さの陰に見える負けん気が、あの娘に凛とした芯を与えている気がする。
 とは言え、日独米クォーターの私と比べれば、まだまだ迫力という点で不足しているかも知れない。ま、人にはそれぞれ魅力がある。羨んでいても仕方ないというものだ。
「あの娘、消えるようにすっ飛んで行ったけど、放っておいて大丈夫なの?車の用意は出来てるのかな」
 私はいまだに呆然としている幹部二人に言った。あれだけの美少女だ、のこのこ単独で外出させていたら危険が波状攻撃ではなかろうか。
「電車でしょ」
「そうね、駅ターミナルで待ち合わせなら、それが合理的ね」
「それって危なくないの?警護は付いているんでしょうけど、もしもって事だって」
 危ないでしょ普通。一向に平気そうな態度はなんなのよ?
「心配いらないわよ、あの娘ああ見えて気が強いし容赦無いし」
「何、それ?」
「レイって、結構怒りにまかせて大暴れする時があるんだってさ」
「なんか変な薬でも投入したの?それとも改造?ライダーなの?」
「失礼なこと言わないで。ライダーって、私はいつショッカーになったっていうの。いつか凄い勢いで痴漢数人を殲滅させた事があるって聞いているわ・・・・・無関係な方も含めてだけど」
 だからってそのまま放っておくのもどうかと思うわよね。
「大丈夫だって、ちゃんと保安部の連中を警護に付けているわよ。民間人が死なないようにね」
 やっぱり外へ出さないほうがいいと思う。とは言え、もう行ってしまったものをどうこうしようったって、どうしようもない訳で。
 私は責任感の感じられない上司二人をそのまま放置したまま、自分の部屋へと移動を開始した。
 部屋に行ってみれば、当然荷物は箱詰めされたままドンと積み上げられ、殺風景としか言い様がない有様だった。
「はぁ、なんか片付けるのも億劫ね」
 正直疲れている。長い船旅を経て来日したばかりだ。
 それでも新しい街にやって来て、住み着く事になる街に対する好奇心が勝った私は、財布を持って部屋を出ることにした。無論目的があっての事ではない。街への興味にかこつけて、ただ部屋を片付けるのが面倒だったにすぎない。おもむろに部屋を出て案内板を辿りながらゲートをくぐって外へ出る。外へ出てから街への移動手段が無い事に気が付いた。
「まぁ、いいか。その辺にあるもので」
 私は呟きながら移動手段を物色するため、周りを見回した。
「ほほぅ、意外と・・・あるもんねぇ」
 まったく、ある所にはあるものだ。青い少しくすんだ色のルノー。手が入っている様子が見られるが、問題ないだろう。こう見えても住んでいたドイツでは、ポルシェ911をサーキットで爆走させるほど走行経験が豊富なのだ。
 見れば不用心にも程がある。キーが付いたまま放置されっぱなしではないか。誰の車か知らないが、持って行ってくださいと貼り紙しているのも同然。乗って行かれて文句を言われる謂われはないぞ。そもそも、ここはネルフ職員の駐車場なのだし、所有者は職員ほぼ確定だ。後でちゃんと返しておけば問題なんぞはありはしない。
 と、言う訳で、私はルノーに乗り込んでキーを捻った。おなかにズシッと響く排気音が辺りを振動させる。決して爆音では無い。響く低音、渋いチューニングを決めているわねオーナー。
「そうだ、一足先に迎えに行って、あの娘を驚かしてやろう」
 ダッシュで消えていった同僚の美少女の行動に、可愛らしさを感じていた私はちょっとしたお茶目な事を考えて行動を起こしたのだった。
 意地悪じゃないのよ。ちょっとした悪戯、可愛いもんよね。
「まぁ、間に合えばだけれど」
 私は呟きながらアクセルを踏み込んで、身体をシートに沈み込ませた。


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