Rei Return Rebirth

その弐

製作 越後屋光右衛門雷蔵



しばらく、生活と記憶の整合に慣れ努めてきた甲斐があったのか、違和感は全く無くなっていた。
 気が付けば、そろそろ「彼」がやって来る頃合いのはづ。
 わたしは教室の窓から外を眺めながら、そう思った。無論授業なんざ聞いてやしないの。だって理解してるから。結構わたしは記憶力は良いようで、以前の世界に学習していた事が高レベルな学習内容だったらしい。頭脳だって優秀だから、卒業だって問題ないわ。
  ちなみに、わたしは今高校三年生の17歳。こっちに来た時感じた違和感はこれだったのだ。胸は重くなっているは、下着は小さくなっているのに大きく伸びる は、あの頃とは大違いで色んな事に興味がどんどん湧いてくる。今まで持っていた知識がリアルに感じるのは、意外と楽しいものだと感じるわ。
 けたたましく持っていた携帯電話が、コールを鳴らした。うるさい。チルドレンの呼び出しに関して、マナー・モードにしていても関係無く鳴り出すのは、以前の時と変わらない。
 わたしは、意気揚々と颯爽と立ち上がると、授業をしていた先生などお構いなしで教室を飛び出した。構っちゃいられないわ。
 ネルフ本部へ到着すると、包帯を巻き巻きして少々痛ましい赤木博士と、ジロリとわたしを舐めるように見据える葛城一尉が待っていた。葛城さんは何故かわたしを見る度に溜め息を吐く。
「レイ、ちょっと頼みがあるの」
 葛城さんがそう言った。
「・・・・・なんですか?」
 わたしはさっさとエヴァに乗り込んでさっさと使徒を殲滅してさっさと碇くんとの御対面を済ませてしまいたいだけなのだ。
 さあ、言って。使徒が来たの、と。
「ちょっとね、迎えに行ってほしいのよ。少々遠いんだけど」
 あれ?ひょっとして、わたしが碇くんのお迎えに?これは幸先がとてもよろしいようだわ。でも、ちょっと遠いってどこ?



「・・・・・そんな」
 わたしは、えらく速いジェット機だかヘリコプターだか分からないモノに乗せられて、軍艦が多数停泊している真っ只中の空母の上に立っていた。これはどう転んでも碇くんのお迎えではない。少々忌まわしい、あの、そう、お猿さんのお迎えの場面だった。
  あの時は、わたし以外にも人員は揃っていたのだが、何と今回はわたし一人。どうも碇くんと使徒は第三新東京市に接近していたらしいのだが、その歩みは両方 ともに相当遅く、ただ待ってるよりは同じく接近していたお猿さんを迎えて、万全の体制を作ろうという算段らしい。はっきり言って割が合わないと思う。
 上空にはウイングキャリアーが待機して弐号機を吊り上げる準備を整えている。あとは、お猿さん登場を待つだけだ。納得している訳ではないが、さっさと済ませて帰ろう。
 カツッと高いヒールの音がした。
 わたしは顔をそちらに向ける。思わず呟いてしまった。
「・・・・・お猿ぢゃない」
 そこに立っていたのは、金髪を靡かせてバリッとした士官スーツに身を包んだ美しい女性だったのだ。
  確かに惣流・アスカ・ラングレーである事は間違いなかった。だが、やはりお猿ではなかった。蒼い瞳優しい光を湛えて、身体に纏った士官スーツはそのライン をクッキリと際だたせている。巨大な乳房からウエストに流れヒップで欲情のループを巻こうとするそのラインは、きっと人々の動きを止めるであろう。
「あなたがファースト・チルドレン綾波レイね。初めまして、惣流・アスカ・ラングレー、セカンド・チルドレンです」
 彼女はわたしに近づいて来て、手を差し出した。わたしは魅入られたように手を差し出す。手を握った時わたしは、良い香りだがどこか危険な感じのする芳香をかいだ。
(・・・・・やはり危険だ。女としてこいつは警戒せねばならぬ)
 女の本能がわたしに告げた。
 とはいえ、無下に敵視するのも得策とも思えなかった。警戒するのは必要だが、過度の警戒は不審を招こう。
「・・・・・綾波です」
 わたしはそう言うだけで精一杯、顔をすぐに背けて歩き出したのだ。
「もう行くの?」
 優しい声、あまりのギャップに背筋が凍った。彼女はスッとわたしの背後に近寄って肩に手を置き小声で言った。
「ちょっと寄り道してさ、おいしいものでも食べていこうよ」

…〜……〜……〜……〜……〜……〜……〜

「てな訳でねぇ・・・・」
 アスカはパフェをスプーンで突っつきながら、ケラケラ笑いながら話している。
 ほとんど拉致同然に連れ込まれた喫茶店。わたしは紅茶をオーダーしている。
  アスカは14歳の頃大学を飛び級して卒業しているのは、前と変わってはいなかった。が、使徒の襲来がなかなか無く、結局チルドレンの訓練を重ねながら大学 院に進み、博士号なぞ2つも取得しているそうだ。大学院には籍をそのまま置いてネルフドイツ支部に就職同然の身の上なのだそうだ。
 それにしてもこの美貌といったらどうなのよ、と言いたくなる。西洋人とのクォーターだとは聞いていたが、14歳当時とはまるで別人の美しさ、卑怯者と叫びたくもなる。相変わらず明るいし屈託も無いような仕草は、同性のわたしも見惚れてしまうほどだ。
 ま、屈託が本当に無くなったのかは本人しか知らない事だけど。
 まったりとした時間が流れる中、わたしの持っていたおなじみネルフ特製携帯電話が叫びだした。
「・・・・・はい?」
(そろそろ帰ってきてほしいんだけどね)
 ちょっと、まったりしすぎたか。そんな様子を眺めていたアスカが、クスッと微笑みながら言うのだった。
「道草が過ぎたようね、戻りましょうか」
「・・・・・すみません、すぐ戻ります」
 わたしはそう答えると携帯をしまって、アスカの顔を眺めた。どうも印象が違いすぎてシックリこないのが原因だろうか。どう接してよいものやら困惑しているわたしがいた。そこで、直接ダイレクトに聞いてみる事にした。
「・・・・・どうしてあなたは、そんななの?」
「はい?」
 アスカは眼を白黒させながらわたしを凝視する。ふと思えば、こんな問いかけ自体間が抜けていて意味を成していないし、通じていない。このままではわたしがあまりにも痛い人に思われそうだったから、急いでわたしは言葉を繋いだ。
「・・・・・イメージが、もっとこう、きつい人かと思ってた、から」
「あ〜、なるほどね。何年か前は結構きつい性格だったみたいよ。確かに言われるわ。でも私自身は自分が変わったって思わないけどね」
「・・・・・と、言いますと?」
「以前は無理して背伸びしてたって事かしら。大人になったんでしょうね」
 アスカは微笑んでわたしに急ぐように促した。
 そして本部。
「お迎え、第弐弾をお願いするわ」
 これ以上誰を迎えに行けと言うのだ?そもそもアスカを迎えに行く時点で予定というか、想定していたスケジュールを逸脱している。顔に不満が出ていたのだろうか、アスカが気を利かせてフォローしてくれた。
「私が行きましょうか?」
「アスカは来たばっかりじゃない。地理だって分からないでしょうし、まだそんな事までさせられないわよ」
 もっともだ。行きますよ、ええ、行きますともどこまでも。地の果てだろうが地獄の底だろうが超人リリスには不可能はないの、ただ面倒なだけ。
「第三新東京市駅センターターミナル一番線上りに、午後五時到着予定よ」
「・・・・・一時間後ですね」
「ええ、かっこいい男の子だから、少しおめかししていってもいいんぢゃない?」
 ニヤリと不気味な微笑みを見せる葛城さんであった。だが、わたしにはどんなかっこいい男の子であろうと心動かされる事はないのだ。わたしは微動だにしなかった。
「サード・チルドレンになる碇シンジくんって言うんだけど・・・あれ?」
 グズグズしてなんかいられない。一瞬でわたしの姿はその場から消えた。
 当然である。
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