シンジ13 壱

制作 越後屋光右衛門雷蔵


「確かこの辺にいるはずなんだけど・・・」
 ブルーの塗装をした、古のフランス車ルノーをドライブさせる美女は、サングラスで目映い光が照り付けるのを防ぎながら、駅の出口付近に視線を走らせ呟い た。素早い動作でルノーを、一気にテールスライドさせて、ノーズを元来た方向に向けさせて停車する。勢いよく、貴重なオールド・カーである事を忘れている ようにドアを開放させて降り立った。
「まだまだ攻撃には余裕はあるけど、急いで探さないと攻撃もろに喰らっちゃうわ。」
 彼女の名前は葛城ミサト。美しい容貌と絶妙なバランスで女らしさを強調するスタイルを持つ彼女は、国連直属の秘密組織ネルフの作戦本部長に就任したばか りの29歳だった。見た目は妖艶とも言える美貌を誇る彼女ではあったが、前職は戦略自衛隊だった。正確に言えば一時在職した形になっただけなのであるが、 国際公務員としてネルフに所属する関係上、本当の前職である中東における戦闘スペシャリストという身分は、国際公務員の前職としてはいささか都合の良くな いものだった。元傭兵の彼女は駅構内に階段を、軽やかに三段跳びで駆け上がった。
 そして、探す事約5分。
「い、居ないわよぅ・・・・・」
 ミサトは、ほとんどべそをかきながら携帯のボタンを慌ただしく押した。戦闘時以外の彼女は非常に女らしいのだ。
 繋がった先からの返答は非情と言えた。
「そ、そんな・・・見つかるまで探せって・・・」
 一旦愛車の側まで戻りながら、困り果てた表情で辺りを見回すミサトの背後から、静かに声が掛かった。
「ゆっくり振り向いて車に乗れ。急がないと大変なんじゃないのか?」
「うっ・・・・・」
 振り向いたミサトは驚愕の表情でそれを見た。助手席に座りリボルバーを構える冷たい眼を持つ少年を。










(しょ、少年なんかぢゃない・・・・・)
 ミサトはシクシク涙しながら、思う。
 まもなくジオ・フロントのネルフ本部直通エスカレータに入る頃。ミサトの愛車ルノーの中では、助手席シートを倒し巨大な胸をはだけて丸出しにした、息の 荒くなったミサトが横たわり、運転席に葉巻をくゆらせながら前を見る少年の姿があった。
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 思いの外、早く到着したジオ・フロントへの侵入口。気分の良いドライブではなかった。38口径リボルバーを脇腹に押しつけられたままのドライブは、経験 が無い訳ではない。前職でゲリラ組織壊滅作戦に動いていた頃、似たような経験はかなりあった。その武器を押しつけた敵のほとんどは死ぬか大怪我を負わせて いる。それほどの実力を持った自分を、これほどまでに自分を固まらせるほどの圧力を掛けられる同乗者は、今まで一人としてなかった。
「止めろ。」
 少年は冷たく言い放つと、空いた片手でミサトを軽々と自分の膝の上に乗せて、いきなり強烈なキスをぶちかました。
「むっ・・・んっ・・・んんっ・・・」
 舌で舌をいいように嬲られて、久しぶりという事もあったろう、リボルバーが脇腹から股間の花園へ移動していけない悪戯をしていた事もあったろうが、少年 の技巧に屈して眼を閉じて身体の力を抜いたのは事実である。隙を大公開したのは事実である。
 そのおかげで。
 ウインドウから覗くは、艶艶とした白い脚。足首にはピンクのパンティが絡み付いている。
 ギッシギシと揺れに揺れまくるルノー。ズブズブと、グリグリと、グチョグチョと、ガシガシと、ズドズドと、パンパンと、嬲りに嬲られその挙げ句の果て は、自ら腰を振り回し随喜の涙と涎を流してしまっていたミサトだった。
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 ライターの音で我に返ったミサトは、己の欲求不満か、少年に嬲られた悲しさか、少年におねだりしてしまった浅ましさか、みんなかもしれないがとにかく涙 するのであった。
「絶対、少年なんかぢゃない・・・あのサイズと、あの動きは・・・」





「何をやっているのよ、あなたは?」
 白衣を水着に羽織り、トボトボ歩いてきた葛城ミサトに声を掛ける金髪の女性が、腰に手を添えて仁王立ちになっている。ミサトに投げつけられる視線はとて も痛かった。
「あ、リツコ。」
「あ、リツコぢゃないでしょう。いつになったらきちんと仕事が出来るの。ああ、この子ね・・・・」
 リツコと呼ばれた女性は少年に視線を向けるが、少年の瞳に視線を移すやいなや、その瞳が持つ静謐で圧倒的な圧力に一瞬絶句するのであった。
「案内してもらおうか・・・・」
 静かに少年は言った。
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「久しぶりだな、シンジ。」
「・・・・・」
 少年は壁に寄りかかり葉巻に火を付けながら、無言で頭上にいる声の主に冷たい視線を送った。声の主は、少年の父親にしてネルフ総司令たる碇ゲンドウ。
 その言葉はいつも唐突。
「おまえが乗るのだ。」
「・・・・・」
 暫し、無言で火花を散らす視線。そこはエヴァンゲリオン初号機のケージ。初号機の顔の前には溜められたLCLの上に架けられた橋がある。火花を散らす親 子の間には、どうにも居たたまれない面もちの美女が二人オロオロした風情で突っ立っていた。
 やがて。
「ぼくの依頼者となるには不適格なようだな。この話は無かった事にしてもらおう・・・・・」
 少年は静かにそう告げると、出ていこうとする。すると、ゲンドウはニヤリと不敵な笑いを唇の端に浮かべながら、マイクに向かって指示を出す。
「冬月、レイを起こせ。予備が使えなくなった。」
「使えるのか?」
「かまわん。」
 再び向き直り、少年に視線を投げたが少年は既にその場から立ち去った後で、影も形もその場には無かったのであった。
「し、司令・・・・彼、帰っちゃいましたが・・・」
 ミサトが困り果てた表情でゲンドウに言う。ゲンドウは無表情にポツリと呟いたのであった。
「フッ、説得。」
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 数分して。
 なにやら妙にヘコヘコしているミサトに連れられて、少年が戻ってきた。その顔には不快感が少々露わになっているのが見て取れる。
 ケージの橋の中央には、何故かベッドが置かれ白い物体がピクピク微かな動きを見せている。
「わたしが依頼者として不適格だと言ったな?だが、正確に言えば依頼者はわたしではない。そこにいる、綾波レイが依頼者なのだ。」
 まったくの大嘘なのだがゲンドウとしては、このまま少年に臍を曲げられて帰ってしまわれては困る事情があった。是が非でも少年にエヴァンゲリオンに乗っ てもらわなければいけない事情があった。
(ユイ、どうなっているのだ?)
 と、心中で呟きながら冷たい視線を少年に投げる。
 少年はゆっくりベッドに近づき、ベッドの上で虚ろな眼を見開きながら喘いでいる少女を見ながら言った。
「用件を聞こう・・・・・」
 ズガンと。
 揺れるケージ。
 不安定な橋の上でベッドから転げ落ちる少女。スッと少女の身体を抱きかかえる少年は、少女の身体を楽な姿勢にしてやり苦しそうな吐息の中に、漏れ聞こえ る言葉を聞いた。
「・・・・・く、苦しいの・・・た、助けて・・・・・」
 しばしの無音が辺りを包む。
「やってみよう・・・・・」
 少年はエヴァンゲリオンに乗る事を承諾した・・・事になった様子であった。










「あ〜も〜、どこに行ってしまったのよぅ・・・・・」
 ぼやきながら歩くは葛城ミサトである。
 少年、碇シンジがエヴァンゲリオン初号機に乗って使徒を撃退した翌日。シンジの姿はどこにも見えなかった。技術部の女帝赤木リツコはデータが取れないと 頭から角を生やしてミサトを責めるは、父親は完全に無視した上に任せっきりにして自室に戻る始末。辛うじて副司令冬月コウゾウが、
「葛城くん、済まないがシンジくんについては君に任せようと思うのだ。面倒でもお願いするよ。」
「ええっ、わたしがですかぁ・・・」
「うむ、作戦部も暇ではない事は重々承知しているが、接点が一番多いのは君なんだ。特別ボーナスも考慮に入れるから、何とかわたしに『命令』と言わせない でくれたまえ。」
 と、ミサトを脅して始末を付けたといった状況であった。
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「ホントに好きで接点が多くなった訳ぢゃないのにぃ・・・」
 ぼやく。
 とにかく、ぼやく。
(まさか、最初の接点が拳銃突きつけられた挙げ句、犯されちゃったなんて誰も考えないだろうなぁ・・・)
 確かに、ネルフに於けるミサトの認識のスタンスは、戦略自衛隊経由でネルフに入って来た戦闘のスペシャリスト。その麗しい外観に似合わぬ壮絶な経歴を持 つソルジャー。
 実際、ミサトの傭兵界に於ける評価は、戦闘技術《A-》、戦闘指揮《A》、作戦立案《A+》で総合評価は旧ソ連のスペッナズの精鋭部隊アルファ隊員に相 当する《A》なのである。もう、アメリカ海兵隊や戦略自衛隊の普通兵士なんかとはレベルが大きく違っていた。
 実力と美貌によって、組織内部では一目も二目も置かれていた。そう、自他共に認めていた。
 なのに。
 それなのに。
 あっさりと。
 コロコロと手玉に取られたように、激しく優しくとんでもない快楽を伴って。
 犯されてしまった。魂までも抜かれたように。
「参ったなぁ。」
 ぼやくミサトは当てもなく、探しながら彷徨い歩く。
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 その頃。
 赤木研究室。またの名を魔女の揺り駕籠。
 イライラしたような仕草で、クイッとマグ・カップのコーヒーを呷るは部屋の主、赤木リツコ。
 第三使徒を、凄まじい勢いで(それもATフィールドを展開する暇も与えず)殲滅した碇シンジの身体データと、MAGIに記録されたデータを照らし合わせ ようとしていた矢先。
 シンジは消えていた。
 数少ない実戦データの照合が出来ると、リツコは異様に張り切っていたのだが、保安部をきれいに撒いて消え去ってしまってはどうもこうもなかった。出来る 事はミサトに鬱憤をぶちまける位であった。出来る事を素早くやって、リツコは自室にて来る見込みの無い吉報を待っていた。
「ぼくを探しているようだな・・・・・」
 声に、スッと振り向くリツコ。イライラが募りすぎて音も無く彼が侵入してきている事にも気が付いていない。
「やっと、来てくれたのね。」
 喜びと期待感からか椅子からバッと立ち上がり、彼に駆け寄っていくリツコ。しかし、その冷えた瞳の圧力に一歩手前までしか近寄る事が出来ずにいる。
「ぼくの身体データが欲しいそうだな。」
 シンジは葉巻に火を付け、リツコに視線を投げかける。
「そっ、そうなのよ。実戦データとその照合を・・・・・」
 喋り終わらさずに、シンジはキッパリと言い切った。その物言いは何人たりとも干渉を許さず、といった重みを感じさせる。
「必要ない・・・・・」
「うっ、くっ・・・で、でも・・・」
「そんな事より、ライフルを至急調達してくれ。今あるモノを改良するのでもかまわん。銃のベース・モデルはアーマライトM16A2を基に、重量バランスも 同一に仕上げて欲しい。それと、銃弾のスペシャル・メイド。これが重要だ・・・・・」
 シンジは瞳で強力な圧力を掛けながら、リツコに迫る。銃弾の仕様をリツコの耳元で囁きながら、スルスルと白衣を剥がしていく。素早い手際でブラウスのボ タンを全て外し終わった頃。
「そっ、そんなの何に使うつもり?」
 驚いたリツコが叫ぶ。が、シンジは表情一つ変えずに、スカートのホックとジッパーを外しながら言った。
「依頼がまた来そうな雰囲気がある・・・あのエヴァンゲリオンの通常兵器として持っているにも丁度いいだろう・・・・・」
 リツコはちょっと勘違いをしていた。まさか、エヴァ用の兵器開発依頼とは思っていなかったのだ。
「ああんっっっ・・・・・って、いつの間にぃっ。」
 気づいた時には、すでに手遅れ。リツコの身体はソファに敷かれた白衣の上に転がされ、成熟した乳房を揉み舐められ花園を指で直に掻き回されている始末。
「いいな?」
「いっ・・いいわぁ・・・・」
 何がいいのかよく分からなかったが、シンジとリツコの会見は終わった・・・・・いや、まだ続いていた。
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 恐る恐る、赤木研究室のドアを開けるは葛城ミサト。言うまでもなく碇シンジ捜索に失敗し、その報告のためやってきたのであった。
「リツコぉ・・・ごめ〜ん。結局見つからなかったぁ。」
 覚悟していた。無論こっぴどく雷を落とされるのを。
 しかし。
「あらぁん、ご苦労様、ミサト。いいのよ、もう。」
 トロンとした視線で、ほんのり桃色に染まった顔で、リツコは優しくミサトの労をねぎらった。
「え?いいって・・・どゆ事?んっ・・・なんか・・・雌の匂いが凄くない?」
 ミサトは部屋に入るなり、鼻をクンスカと嗅ぎだした。そして、リツコの顔をデロリと舐めるように見て、
「なによぅ、あんた人を働かせておいて、自分はオナニーに耽っていた訳?」
「ばっ、そんな訳ないでしょうっっ。」
 桃色の顔を一気に赤く染め上げたリツコは、慌てて否定する。だが、野性の戦士ミサトの嗅覚は逃さず淫靡な香りをキャッチしていたのだった。
「でもねぇ、これは間違いなくあんたのおつゆの匂いなのよねぇ、わたしがあんたの匂いを忘れると思うの?」
「ぬぅっ・・・」
 かつて、このふたり。とても仲良しだった。それは高校時代、華よ蝶よと育てられていたはずの時。どこでどう間違ったやら、ふたりは密室で濃密な、それで いてとびっきり淫靡な仲良しになった事があった。
「休日になるとさ、ふたりで散々舐めたり啜り合ったりしたぢゃない。」
「やめてよ、もう・・・わたしはそんな気、もうないんですからね。」
「わたしだって、ないわよぉ。そんな事を問題にしてんじゃなくて、あんたの匂いについてぢゃないの、今話してるのは。」
 野獣来襲を考慮に入れておかなかったのは失敗と、後悔するが後の祭り。
「わかったわよぅ、ここんとこ欲求不満でね。イライラ鎮めるのについついあそこに指が伸びちゃって・・・・・」
 本当は違うのだが、面倒になって話を合わせるリツコであった。それに、まさかシンジに徹底的に犯されましたなんぞとは、口が裂けても言えるはずもない。 しばらく腰が痺れてやっと起きあがれるようになったなんてとても言えない。
「ま、わたしたちは一番身体が熟れている頃だからねぇ、仕方ないわよぅ。」
「さ、もういい?急な仕事が入っているから、もう帰ってくれない?」
 リツコは昔からの付き合いで、ミサトのエロ話はこれからが長いのを良く知っていた。シンジに犯された余韻に浸りたいのも山々だったが、シンジのリクエス トに応える方が優先だった。
 リツコはミサトを適当に部屋から追い出すと、早速設計に取りかかるべく端末のウインドウを開いた。
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「さってっと・・・あんなオナニーエロ女構ってる場合ぢゃないわね。」
 葛城ミサトは、ここ第三新東京市に来たばかり。引っ越しの片づけも済んでいない有様である。やって来て数日後には憎むべき使徒の殲滅を目の当たりにして 気分はスッキリ。その上、シンジに犯されて身体に沈殿していた情欲もスッキリ。やたらと身体が軽くなっている。リツコにシンジ捜索も必要なしと言われ、当 面する仕事もない。
「この機会を逃す手はないわね、速攻で片づけを済ませてしまいましょう。」
 と、青いオールド・ルノーに乗り込むやいなや、素晴らしいスピードで自宅マンションへと急ぐのであった。










 その頃。
 碇シンジは綾波レイが入院している病室に、音も無く佇んでいた。点滴を繋がれ、きめ細やかな色白の顔が蒼白なまま眠りについている。
「・・・・・」
 碇シンジは綾波レイを依頼者として認めた。彼にしてみれば、いささかイレギュラーな依頼方法だったのだが、バカ親父の依頼を受ける位ならイレギュラーで もかわいい女の子の依頼が好ましいのは言うまでもない事だった。
(まだまだ、師匠のようにはいかないな・・・・・)
 シンジは心でそう呟いて、レイの柔らかな髪をそっと撫でると消えるように彼女の病室を後にするのであった。










 片づけた。
「うっふっふっふっふ・・・・・」
 葛城ミサト29歳。かつて、引っ越してからこれほどまでに順調に片づけが済んだ事があったであろうか?
 否。
「素晴らしいわぁん。天は二物を与えてしまっていたのねん。」
 自画自賛。とはいえ、確かに綺麗に片づいている。
(とはいえ、かなり苦労したわねぇ。戦闘してた方がよっぽど楽だったかなぁ。)
 などと考えている。肩まで伸びた髪を後ろに無造作に束ね、やる気が失せないうちにとブラとパンティだけになって作業を開始したはいいが、意外と苦戦した ために珠のような汗が身体を覆っている有様だ。邪魔にならないのか?と心配しそうになるほど存在感を誇示する乳房を覆う薄い桃色のブラジャーは、汗によっ てピッタリ張り付き、いまだピンク色を保持している乳首の色を浮き出させている。上がそうなら、当然下もそうなっていてもおかしくはない。ブラとお揃いの 桃色Tバックは、張り付くと言うよりもキチキチに食い込んでいると言った方が妥当な気がする。それにも増して驚きは、布の覆われていないにも関わらず キュッと上がって美しいラインを見せているヒップだ。上質で今が食べ頃の桃といった風情を漂わせている。
「ふぅ、いくらなんでもこんな汗まみれでは、気持ち悪いわねぇ・・・お風呂にしよ。」
 ミサトは、部屋中に甘い汗の匂いをまき散らしながら浴室へと向かい、脱ぎにくくなってしまった下着をようやく脱いで浴槽へと収まるのであった。
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「くぅぅぅ〜〜〜・・・・・」」
 葛城ミサトが風呂から上がって、涼風そよぐ部屋の中、誰憚る事なく真っ裸でソファに座り、グビリグビリとビールを呷る。
 あまりのうまさに身震いひとつ。ブルンと豊乳、押さえつけるブラもなく遠慮もなしに揺れまくっている。
「風呂とビールは命の洗濯ねぇ、人類の文化の極みだわ。」
「まったく、同感だな・・・・・」
 鼻歌でも出そうに御機嫌だったミサトの気分を、一気にダーク・ゾーンへと突き落とすは忘れられない碇シンジの声である。
「なっ・・なっ・・なん・・なん・・」
「ナン・・・確か、東南アジア方面の国の料理だったな。パン生地のようなものを平たくして壷で焼いた食べ物・・・・・」
 ミサトの野性の閃きは、シンジの瞳の柔らかさを素早く感じ取っていた。
(前と違う!!!今なら倒せる??)
 そう思ったのも無理はない。だが、気が付かなければならなかったのは、シンジに嬲られ犯された甘美な記憶を熟れた身体が記憶している事だった。意志に反 してその身体が彼に甘えたがり、それが精神の甘えに繋がる可能性だった。
 判断の甘さは、すぐに攻撃に移るという愚かな行動を呼び起こしていた。もっとも、攻撃自体は一片の甘さもない非情なものであったのだが。
「問答無用!!!」
 叫びながら。
 背後を取っていたシンジに、ソファの背もたれに手を付いて超スピードの回し蹴りを放つ。
「・・・・・」
 が。
 一瞬で蹴り足は両手で抱えられ、床に付いたばかりの軸足もシンジの膝裏に押さえ込まれる。ゆっくりとミサトの肩を床にフォールする形へ移行して、両膝を 巧みに使い腕も固定する。
 綺麗な形の海老固め。それも大股開きの。シンジは押さえ込んで空いた片手でミサトの、まだピンク色のクリトリスをそっと撫でる。驚愕の表情を浮かべたま まのミサトは、おそらく初体験であるだろうと思われる、眼前に拡げられた自分の淫裂を眺めるという行為に声も出ないでいる。
「さて・・・・・」
 シンジはそっと、乾いている淫裂に唇を寄せてゆっくりたっぷり嬲りにかかるのであった。
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 そこまで犯るか?と思うほどに犯られまくられ嬲られまくられてしまった葛城ミサト。
 秀麗な顔は、溢れ止まらぬ涙と涎と汗に濡れ、白目を剥いてちょっと不気味な様相を呈している。絶頂へと登らされたまま、下ろしてもらえないでいたミサト の身体は、エクスタシーのまま放り投げられている状態。乳首はカチカチに硬くなったまま荒い息とともに上下している。だらしなく開かれた股間の淫裂から は、いまだ本気汁が止めどなく流れ出している始末である。
「ヒュー・・・ヒュー・・・ヒュー・・・」
 声も、もはや風切り音しか出なくなって久しい。
「意外と弱いんだな・・・・・傭兵部隊ではこれは使用していないっていうのは本当の事らしい・・・・・」
 シンジは微かな微笑みを浮かべ、ミサトの大きくなっているクリトリスを嬲った。
「ヒュ〜・・もう・・ゆ、ゆるし・・・て・・・ヒュ〜」
 抗う事すら出来ないくらいに責められ続けた身体は、もはやミサト本人のものではなくなっていた。精神的にも肉体的にもシンジが支配者であるという刻印が 刻みつけられた模様である。
「まあいいだろう。本来ここに来た用件は違うのだが、こうなってはどうにもならないからな・・・・・」
 と、シンジはミサトの身体を優しく抱きかかえ、ベッド・ルームへ移動してそっと毛布を掛けてやるのであった。










「いないとは、どういう事かね?葛城くん。」
 冬月副司令は、娘ほどの年齢の葛城ミサトを前にして優しく諭すが如く問いかける。
「はあ、彼は『世話をしてもらう必要はない。自分の事は自分で出来る。拠点として利用させてもらう事もあるだろうが、拠点はひとつではない。』と・・・」
 入居間もなく、これだけ綺麗に整頓出来ていればぼくが世話してやらずともいいだろう、となんか自分のズボラを見抜かれているようなセリフを吐かれた事 は、もちろん言わない。犯されまくってよがりまくって腰を抜かして身動き取れない自分を、ベッドに送ってもらった上、淫らな液体にまみれたリビングの掃除 までしてもらった事も、絶対口外なんて出来はしないのだ。
「しかし、それでは使徒来襲の時どうするか・・・」
 副司令は顎に手を当てて、ダンディに考える。
「それでしたら、連絡方法を教えてもらいました。えっと、まず新聞広告にS13型トラクター購入希望、面会場所、時間を明記する事。もひとつはラジオで賛 美歌13番を流す事です。後者は緊急の連絡が必要な際用いるように、という事でした。」
「また手間の掛かる連絡方法だな。」
「どうも、自分のスタイルは崩したくないそうで・・・」
 ミサトは自分が責められているように恐縮してしまっている。
「仕方があるまい。葛城くんは引き続きサード・チルドレンとしてネルフ専属の交渉を頼む。」
「はあ・・・」
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 ミサトは或る意味、自信喪失していた。
 会う度会う度、激しく犯され、それを求めてしまっている身体がある。通常ならば身体に触れられただけでコテンパンにぶっ飛ばす所であるが、傭兵時代培っ た戦闘技術も全く通用しない。年齢にかかわらず性技に長けている訳ではないが29歳の熟れた身体が14歳の少年の技巧に敗れるなんて思ってもみなかった事 だった。それ以前に14歳の少年に激しく犯されて、彼を求めて身体が夜泣きする状況は考えてもみなかった事である。
 意志としては会いたくはないが、身体が彼を想うだけで熱く濡れてくるのが分かる。
(どうなっちゃうのよぅ・・・・・逢いたくないけど、逢いたいしぃ・・・けど、どこにいるかなんて見当も付かないわよ。)
 トボトボと、ミサトは再び当ても無く、困惑を胸に彷徨い歩くのであった。










 第四使徒、殲滅。
 あっけない結末であった。出撃した初号機は高速スピードの触手をかいくぐり、使徒の目の前で背中を向ける。この動きには使徒も混乱した様子で、触手をわ ざわざ大きく廻し初号機の正面から攻撃しようとしたのであった。初号機は触手の動きを見切ったように身体を沈め、触手は真っ直ぐに自らのコアに二本突き立 てたのだった。
 避難勧告を受けた市民は、ほとんどシェルターに行き着く前に勧告は解除され、日常へと帰っていった。もっとも、第四使徒は爆発せずその身体をサンプルと して提供する羽目になり、大きなサンプルを収容する場所なぞ、右から左へと用意は出来るはずもないから、使徒は必然的に市民の眼に触れる事となる。
 そして、あっと言う間に使徒を殲滅したパイロット碇シンジの姿は、プラグから降りるやいなや闇に紛れて消えていったのであった。
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 葛城ミサトはちょっと迷っていた。道に迷ったのではない。
 監視カメラが残した碇シンジの行動記録を調べていた時に思いついた事があったのだ。自宅でくつろぐミサトを犯した時を、少し遡った時間に綾波レイの病室 を訪れている記録が見つかった。
 優しくレイの髪を撫でるシンジ。自分に接している時には見せた事のない表情。
(これは・・・もしかして、レイをだしに使えば居所も確定出来るかもしんない・・・)
 そう、ミサトは結局シンジの居場所を発見、確保が出来なかったのであった。作戦指揮をする間もなく殲滅される使徒。パイロットの所在も確認出来ない管理 者。暴落する自分の評価を復帰しようと、せめてこの使いにくいサード・チルドレンを自分の管理下に置き、株を上げようと目論むのだが、レイを使うのはいさ さか気が引けているのは事実だ。
(もう、あいつのことだから、処女だろうがなんだろうが遠慮なしで犯すんだろうなぁ・・・どう見ても考えてもレイは処女だろうし・・・辛いだろう なぁ・・・)
 ふと、自分の喪失の事を思い出す。相手はかつて本気で愛した男だった。多少の痛みはあったものの、幸せな感覚が自分を包み込み痛みなぞ気にもならなかっ た。
(あの頃が一番良い時期だったのかしらね・・・)
 その男は、いったん別れた後ネルフ・ドイツ支部で再会した。真実が知りたいだけだと言い残し、スパイ容疑で射殺されたのだった。昔の関係上ミサトも一時 拘束され取り調べられた。遺体とも対面した。そして、記憶の引き出しの奥へと、思い出をしまい込んだのであった。
(レイがあいつに惚れてくれたりしたら、もう一件落着なんだけどな・・・そんなわきゃないか。)
 おそらく、キチキチに狭いであろうレイの処女膣は、シンジの凶悪な肉刀によってズタズタにされるのだろう。熟れてこなれた自分ですらズタズタにされそう な感覚を覚えたのだ。処女に到底耐えきれるような凶器ではない。そんな状態で惚れた腫れたもあるはずがない。
 とはいえ、そうでもしなければ自分自身に未来がないとなれば、きっと誰でも悪魔に魂を売るのだろう。ミサトを後ろめたい気持ちをむりやり心の底へ沈め、 レイのいるはずの控え室へと歩き始めるのであった。
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 純白の少女を前にして、ミサトはどういう風に話を持っていこうかと考えてはみたものの、どうにもきっかけが掴めない。
「あ〜、う〜・・・」
 唸ってみるも、それでアイディアが出るはずもなく。
「・・・・・言いたい事があるのなら、早く言ってください。」
 レイに突っ込まれる始末である。
 変わらない無機質な視線。ジッと見据える視線の先は、『無』を見ているような趣が感じられる。
「え〜、レイってば、サード・チルドレンに会った?」
 所詮、小細工は自分には似合わないと、女の勘で生き延びた女は開き直って直球勝負に賭ける。聞き方が少々腰が引けているのは、根性が入っていない証拠な のか?
「・・・・・会ったみたいです。」
「何、それ?」
「・・・・・入院してる時にお見舞いに来てくれたようで、わたしは意識がありませんでしたから、わからないんです。」
「あ〜、そゆ事ね。前回の戦闘記録と今回の戦闘を見てどう思った?」
「・・・・・凄いです。とてもわたしにはあんなにスムーズにはエヴァを動かす事は出来ません。」
「彼は毎回使徒が襲来するごとに、契約を結んで搭乗するんだけど・・・初回の契約依頼者があんただって、聞いてる?」
「・・・・・?」
「首傾げるって事は、聞いてないのね。」
「・・・・・司令には何も。ケージで『やってみよう』とか聞こえた気はしますが。」
「そう。覚えていないのね。」
「・・・・・わたしが契約を依頼したんですね。」
「そうなのよ。今はネルフで契約をしてるけど、初回に限ってはあんた個人の契約になっちゃったから報酬を支払えないでいる訳よ。もちろん、使徒を殲滅する のが目的の組織に所属している訳だし、費用はネルフで負担するのは当然なんだけど彼は初回の報酬に限ってはネルフからの支払いを頑強に拒否しているの。」
「・・・・・」
「遂行してもらった依頼に報酬を出さないでいる事は、ネルフと綾波レイに対する信用問題になりかねない。今後の使徒殲滅依頼についても支障が出ないとは言 い切れなくなってしまうのよ。」
「・・・・・それは、困りますね。」
「でしょ。でも、現在、彼の居場所を特定することはネルフの人手不足も相まって非常に困難な状況にあり、早急に解決すべき懸案なのだけれど打つ手がない 訳。」
「・・・・・要するに、依頼者であるわたしが探して出して、報酬を受け取ってもらえ、という事なんですね。」
「ま、簡単に言えばね。もちろん、わたしも一緒に手伝ってあげるわよ。」
「・・・・・わかりました。ですが、わたしはなんの探す手掛かりも持っていません。」
「さっき、思いついた手だてがあるわ、レイが動いてもらわないといけないけどね。」
「・・・・・はい。」
 口から出任せとは、こういう事を言うのだろう。それでも何とかレイという囮鮎をゲットしたミサトは、シンジをおびき寄せる算段に入っていくのだった。
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 予想に反して、あっけなくシンジとの連絡はついてしまった。理由は色々あるのだろうが、やはりレイ本人の『S13型トラクター、前回購入分価格交渉を望 む。駆逐艦綾波』という新聞広告が功を奏したのだろう。
 シンジからの返事は、意外な形でもたらされた。連絡手段としてのネットワークはMAGIによって掌握されている事を調査済みであるらしく、意表をついて 伝書鳩という方法でレイのもとに届けられたのである。
《**日**時、綾波邸にて。S13》
「簡潔な文章ねぇ。」
 ミサトは届けられた文書を見ながら、驚きの顔を見せている。指定された前日。ミサトは打ち合わせと称してレイを無理矢理食事に引っ張り回した。セカン ド・インパクト世代のミサトは、当然の如く出された食べ物飲み物は全て胃の腑に収める。少食気味のレイはミサトの勢いに釣られたのか、彼女にしては食べた 方であったに違いない。椅子の背もたれに寄りかかり、お腹をさすって息をついていたのだから。
「手抜きとも言えるかもね。・・・しかし、レイねぇ掃除くらいしなさいよぉ。こんな部屋じゃあ身体に悪いわよ。」
 実際はそれほどひどい部屋とは思っていないのであるが、何年ぶりかの掃除をやり遂げた満足感なのか、ミサトは得意気に言い放つ。
「・・・・・寝に帰るだけですから。」
 ベッドに座ったままのレイは、満腹になった心地よさなのか眠そうな眼でボソッと言った。
「・・・・・それにしても、ひどすぎるな・・・・・」
 レイの座るベッドに彼女と向かい合っていたミサトは、その声の主を一瞬で悟ってギギギと擬音が出そうなぎこちなさで振り向いた。
「どちて、今ここにいるの?」
 シンジが音も無く、ひっそりと壁にもたれて立っていた。
「・・・・・何の予備知識もなしに知らない部屋を訪れるなんて、ぼくには出来ない。それほど陽気には出来ていないんだ、ぼくの頭はな・・・・・」
「そっ、それにしたって、女の子の部屋なのよ。」
「・・・・・ぼくは、兎のように臆病なんだ。他人はみんな恐い存在だということだ・・・・・」
 シンジは素早い動作でリボルバーを抜くやいなや、ミサトの銃口を向けて部屋の端へ移動しろとそれを左右に動かした。
 ミサトは渋々立ち上がり、
「レイ、交渉お願いよ。」
 と、レイに懸案を放り投げた形になって、椅子を窓際に置きドッカと腰を下ろした。外を眺めながら、その耳はレイとシンジの交渉を一言でも聞き逃すまいと 大きく拡がった。
「・・・・・眠そうだな。」
 シンジは眠そうな眼でトコトコやってきたレイを見ながら言った。
「・・・・・ええ。」
「・・・・・用件を聞こう。」
「・・・・・前回分の報酬の件。」
「・・・・・どうしたいんだ?」
「・・・・・わたし個人はお金を持っていないの。」
「・・・・・報酬の交渉にならないな。」
「・・・・・だから、ネルフから受け取って。」
「・・・・・謂われのない金を受け取る事は出来ない。そもそも、君はどんなモノでぼくに報酬を支払うつもりだったんだ?」
「・・・・・わたしには・・なにも無いから。・・・あるとすれば、わたしの身体くらい。」
「・・・・・いいだろう。では、君をもらおう。」
 ここまで、でかい聞き耳を立てていたミサトは小さくガッツ・ポーズ。まったく希望通りの展開に事が進んでいくのに、頬の緩みを押さえきれずにいる。
「・・・・・わたしを?」
「・・・・・そうだ。君のすべてはぼくのモノだ。身体も心も命までも。身体はぼくの許可なくして他人に触れさせる事なく、心はぼくだけを想い、命はぼくの ために全うする事。それでいいのなら報酬として受け取る。それでどうだ?」
「・・・・・いいわ。」
「・・・・・報酬は確かに受け取った。」
「・・・・・あなたの命令に従えばいいのね?」
「・・・・・命令する時もある。だが、命令と言わない限りはぼくの願いという事になるな。その場合は君の意志に任せる。」
「・・・・・わかったわ。」
「・・・・・最初が命令ですまないが、早速この部屋を出てそこにいる葛城ミサトと同居してもらおうか。」
「ななななな、なんでぇっ?」
 いきなり飛び出た自分の名前にもビックリだったが、レイと同居なんて急に言われるとは思っていなかったもんだから、椅子の上に飛び上がるほど驚いてし まった。
「・・・・・彼女と一緒にいれば、ぼくとの連絡は付けやすいぞ。本来はそれが第一の目的だったはずだろう?つべこべぬかさずに一緒に住め。」
「あう、あう・・・・」
 自分の目的まで察知されていては、根が正直なもんだから誤魔化しの言葉すら出ないミサトだった。
「・・・・・おまえの部屋はここよりずっと快適で、綺麗だからな。」
 シンジはそう言い残すと、再び闇に紛れるが如く姿を消すのであった。大いなる誤解を残して。後にその誤解が予想もしない事態になる事も知らずに。









 使徒が来て、殲滅された。
 徹底的に端折ってしまって申し訳ない気持ちだが、面倒なので了解して欲しい。
 一応報告までに。
 多角形の宙を浮かぶ謎の物体。キラキラして浮いている時はそれはなかなか綺麗で見物だったのだが、使徒に認定されては良い気分で眺めている訳にはいかな いネルフの諸君であった。
 便宜的にサイコロ君と名付けるが、彼はなかなか敏感で自衛隊の戦闘車両や、エヴァのダミー・バルーンなんかを的確に判別して攻撃を加える、それも強烈な やつを。
 サイコロ君の放つ加粒子砲(と、命名された)は、大したインターバルも置かずにズバッと発射できるらしい優れモノで、それはそれでネルフの諸君にとって は全く厄介な代物であったのだった。
 作戦本部長葛城ミサトは、ようやく巡ってきた見せ場に張り切るが、襲来するたびパターンの違う相手にやる気は空回り。
 碇シンジが、とんでもない技術でエヴァを操り、愛銃となった感のあるアーマライトM16に似たライフルを手に狙撃を敢行するのだが、彼の技術を持ってし てもサイコロ君の展開するAT・フィールドは突破出来なかった。
 それをいいことに、サイコロ君は本部真上から内蔵していたボーリング・マシンを使用し、直接本部攻撃に打って出た。そのためある程度時間が稼げたネルフ の諸君は、自衛隊で密かにコッソリ開発していたポジトロン・ライフルを徴収(強奪・・・作戦本部長曰く、借りるだけよん)し、ダミー・バルーン二体を加粒 子砲で撃たせる隙にシンジの神業狙撃を敢行。これを撃滅したのであった。
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「なんて無謀な事をっ・・・・・」
 シンジを前に大股開いてよがっていた赤木リツコ博士は、桃色天国から地獄へ突き落とされたような顔をして叫んだ。
「・・・・・無謀とは?」
 シンジは表情も変えずに身支度を整えている。リツコはといえば腰が抜けているらしく、悲壮な顔でいるのだが弛緩した身体で脚を拡げたまま横たわっている ので、結構間抜けな光景である。
「ミサトのズボラさをあなたは知らないのっ?」
「・・・・・ズボラであれだけの掃除は出来ないと思うが?」
「10年に一回くらいはするわよ。わたしは二十歳の頃に一度だけミサトが掃除をしたと聞いた事があるだけだもの。大体あなたはミサトの生活を知らない。」
「・・・・・そんなに酷いのか?」
「酷いという言葉が不満を言いそうなくらいね。」
 シンジは顔を顰めて、弛緩して腰を抜かしたままのリツコに向き直った。
「司令はレイをあなたに渡す事を承知したのは、どのみちレイが司令に逆らうなんて考えられないって思っているからだし、事実そういう風に育ててきたつもり よ。」
「・・・・・だが、あの娘は長く生きすぎた、触媒となるには・・な。一人目のように早いうちにボディを交換していなければ、リリスの持つ生物としての残酷 性と純粋性は維持出来ない。しかし、うちのバカ親父はあの娘に母さんを重ねて見過ぎた、その結果彼女を長く生かしておく事になった。」
 シンジは驚愕に歪むリツコを後目に言葉を続けた。
「・・・・・たとえ人工的に作られた生命体であろうと、ひとたび生を受けた以上は一人の確固たる生命だ。どんなに外界と接触を絶とうとしてもネルフ内に役 目を負っている以上は完全に絶つ事は出来ない。自然に自我が芽生えるのは当然の事だ。あの娘は非常に頭のいい娘だ、自分の役目を理解しながら悩みつつ葛藤 していたのだろう。雛鳥はいつかは羽ばたく、バカ親父はそんな事も分からなかったのかな?」
「確かに甘く見ていた部分は否定しないし出来ないわ。でも、わたしが言いたいのは、ある意味純粋培養に近い育て方をしてきたレイをミサトと一緒に住まわせ て、ミサトの生活がスタンダードと捉えられたら大変な事になる。・・・・・あなたは絶望的な生活不能者を世に送り出そうとしているのよ。今ならまだ間に合 うわ、レイがミサトのズボラを覚える前に・・・せめて、部屋だけは別にして。」
 リツコの願いを耳の片隅に残しながら、シンジは猛スピードで性臭漂うリツコの執務室を後にして、ミサトとレイのマンションへと向かうのであった。
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「・・・・・魔窟だ・・・・・」
 ここはレイとミサトが暮らすことになった、コンフォート・マンション。シンジの記憶が確かならば、板張りの廊下がリビングに続いて、据え置かれた大型の テレビが視界に入るはずだった。
 見えない。
 大型のテレビはおろか、廊下さえも。
「・・・・・綾波。いないのか?」
 彼はレイの事を『綾波レイ』とフルネームで呼んでいたのであるが、少々面倒になって省略して『綾波』とだけ呼ぶようになっていた。声を掛けたが返事は無 い。荷物なのかゴミなのか分からないモノの上にある、細い獣道のような窪みを進んで奥へと進むシンジ。その姿勢、眼光に油断も隙も微塵たりとも見あたらな い。
 ゴソゴソと。
 辛うじて襖が見える部屋の中から音がした。そこには捻りはちまきにジャージという出で立ちのレイが、額から汗を吹き出させて喘いでいた。
「・・・・・綾波。どうしたんだ?」
 シンジが何とか荷物を掻き分け、レイの肩を抱きながら問いかけると。
「・・・・・なんとか、ここまで・・・綺麗になったの。」
 レイは掃除をしていたのだ。掃除の仕方も知らぬのに。見れば押し入れから続く畳の上、丁度布団が敷けるくらいのスペースが空いている。どうやら、寝る場 所だけは確保したらしい。
「・・・・・大したものだな。」
 シンジは呟く。レイは下からシンジを見上げて言った。
「・・・・・わたし、ここに居ていいの?・・・って言うか、居なくちゃいけないの?」
「・・・・・済まない。ぼくの認識不足だったようだ。」
 シンジはレイを立たせてゆっくりと獣道を移動し始める。
「・・・・・隣に確保してあるぼくの部屋へ避難した方がいいようだ。」
 なんとか魔窟から脱出した二人は、隣の部屋へと避難に成功しレイは疲れた身体を休めるために、ベッドで横になるやかわいい寝息を立て始めるのであった。
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 魔窟と呼ばれた部屋の主はどこに行った?あれだけの部屋になるには当然生活をその場でしていなくてはいけない訳であるが、シンジがレイを救出に行った時 には姿は見えなかった。その時、魔窟の主は赤木リツコ博士の執務室に程近い、己の執務室にて惰眠を貪っていたのであった。シンジがリツコを犯している時か らずっと眠り続けていやがる。サイコロ君殲滅に際しミサトが行った作戦指揮はほとんど無いと言っても差し支えはない状況であった。使徒殲滅の後片づけは、 技術部なのに赤木リツコ博士が担当し疲労困憊にも関わらず、シンジの凶器で抉られ掻き回され辛うじて残っていた気力も完璧に失われてしまった。本来シンジ はミサトを犯そうとしていたらしいのだが、居場所を特定する前にリツコと遭遇したために、リツコで間に合わせる選択をしたのである。甘いとばっちりを受け たリツコは、それはそれでよろしかった様子で桃色天国を徘徊している。要するに、ミサトは大した活躍も出来なかった故に、ふてくされて寝ていたという子供 じみた事をやっていたのだった。
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 結果的に、シンジはミサト捜索を中断し魔窟の大掃除に取りかかる事になってしまった。レイをそのまま隣の自室へ寝かせたまま、一気呵成に事を済ませる。 冷静なシンジの額にも汗が浮かぶ事で窺えるように、かなりの難作業であったらしい。
 ようやく、片を付けて自室へ戻ったシンジを待っていたのは、芳しい食事の香りであった。
 テーブルには二人分の食器が既に用意され、後はおかずの出来上がりが置かれるのを待つだけとなっている。
「・・・・・綾波?何をしているんだ?」
 シンジはキッチンに掛けられた暖簾から顔を出して、作業をしていたレイに問いかけた。
「・・・・・お料理。」
 テキパキと出来上がった料理をテーブルへと運び出すレイ。驚きのあまり呆然とするシンジに、キラリ鋭い一瞥をくれて一言。
「・・・・・邪魔だから。・・・・・座っていて。」
 すごすごとシンジはテーブルに付く。レイもやって来て腰を下ろし手を合わせながら、
「・・・・・いただきます。」
 とお辞儀をするのだった。
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 その食事風景は、静かだった。
 お互いが無口であるのもそうだが、食事中は口を動かす鉄則が完璧に守られている。
「・・・・・ごちそうさま。うまかったよ。」
「・・・・・ありがと。」
 シンジの礼に、レイは頬を染める。
「・・・・・しかし、綾波は料理出来るんだな。」
「・・・・・ええ。知識はあったけど・・・葛城さんの食生活では、自分自身が料理する自炊が一番身体に良さそうだったの・・・だから練習したの。」
「・・・・・料理は楽しかったか?」
「・・・・・楽しい?そう、楽しかったのかも知れない。わたしはただあなたに食べてもらいたいって・・・思っただけ。普段は必要に迫られてしてるだけだ し、そんな事は思いもしないけど・・・・・」
「・・・・・ぼくは綾波と食事すると楽しい。」
 シンジはそう言うと、食器を持って立ち上がる。
「・・・・・わたしが片づけるから、置いておいて。」
「・・・・・それくらいは自分でする。」
「・・・・・いいの。そうしたいの。そうさせて。」
 レイの紅い瞳に宿る真摯な色に、シンジは引かざるを得なかった。クールな美少女の真剣な願いに、心動かされるは男の性であろうが、シンジの表情が動かな いのは流石と言うべきであろう。
「・・・・・わかった、頼む。」
 と、シンジは食器をテーブルに残したまま、リビングへと移動する。レイがすぐにカチャカチャとお茶を持って追いかけてきた。シンジの茶碗にお茶を注ぐ と、また戻っていく。どことなく、新婚家庭の様相を呈している。
 しばらくして、後片づけを済んだのかレイが戻って来てシンジの前に座り込んだ。
 暫しの無言。そして。
「・・・・・どうしてあなたはわたしの身体を求めようとしないの?」
 お茶を注いだ小さめの茶碗を、白い両手で大事そうに包み込んで言った。俯き加減でそっとシンジを伺い見る様子は、幼いながら危険な色香が漂ってくるよう だった。
「・・・・・求めてほしいのか?」
「・・・・・そういう訳では、ないけど。」
 素っ気なく言うシンジに、レイは少々モジモジしながら言葉を続ける。
「・・・・・報酬にわたしをもらうって、言ってたから。・・・・・わたしだって、何も知らない訳じゃないから、それなりに覚悟だって・・・したし。その、 あ、あの・・・あなたなら、あげてもいいなって・・・」
「・・・・・それは、焦る事はない。早ければいい訳ではないからでもあるし、ぼくは綾波を大事に思っているから今はしないと考えているだけだ。心配しなく とも、いずれは・・・な。・・・・・だが、どうしてそんな事を思ったんだ?」
 彼にしては異様に優しい口調でレイにそう尋ねる。
「・・・・・あなたには、司令とは違う、なにかこう、懐かしい優しさを感じるの。昔、無くしかけていた大事なモノ。そんな感じが、するの。」
 スッと、レイは顔を上げる。どこか縋り付きたいような表情である。
「・・・・・すっかり忘れていた訳ではなかったようだな。」
 シンジはニヤリと微笑むと、
「・・・・・昔、ぼくがこうなる前だ。母さんが消えてから割合すぐの時期だったかに一緒に暮らしていた事がある。ぼくもよくは覚えていないが、随分と仲が 良かったそうだ。いつどこにいても、片時も離れなかったと聞いている。ぼくが覚えているのは・・・綾波が涙で顔を濡らしながらバカ親父と一緒に車に乗って 去っていく所だったよ。ぼくは懸命に綾波を取り返そうと車を追ったが、子供ではどうしようもなかった・・・・・」
 そう言いながら、レイの手を引き寄せ肩を軽く抱く。
「・・・・・じゃあ、あなたは・・・・・」
「・・・・・そうだ。綾波、君を取り戻しにやってきたのだ。綾波がどこまで覚えているか不確定要素があったから、回りくどい事をしたが綾波の気持ちは変 わってはいなかったんだな、うれしいよ。」
 レイの眼は大きく見開かれ、見る見る内に涙が溢れ出してくる。軽く開かれた唇は微かに震え、声にならない歓声が挙がっているようだった。
「・・・・・待たせたようだが、今はこれで我慢しろ。」
 と、シンジはゆっくり優しく、初心者相手にしては異常に長く、高度なテクニックを駆使したキスを、レイにするのであった。










 綺麗に整頓されたマンションの一室。碇シンジにあてがわれた部屋。何部屋あるうちの一室を与えられた綾波レイは、ひとりベッドに横たわっている。コロリ と寝返りを打つ顔に表情は乏しい。瞳は開かれ濃い紅の色が幻想的な雰囲気を醸し出す。
「・・・・・そう、覚えている。」
 軽く呟くレイは憂いを湛えた表情を見せるが、それを見た者は窓から覗く月だけだった。
(・・・・・覚えているのは、わたし?・・・それとも、別の?本当にわたしが覚えている事なの?わたしが経験した事なの?・・・・・わからない・・・・・ わたしは、綾波レイ?碇くんが求めているヒトなの?)
 レイは、流石に自分自身の事である故に、自分の出生は理解している。感情がない訳ではない、今まで喜怒哀楽が表に出るほど心が動かなかっただけなのだ。 それは、心にひとつ欠けたピースが存在し、欠けているが故の事だったのである。
「・・・・・碇くん・・・・・」
 欠けた心のピースは、碇シンジの存在そのものだった。埋まった隙間は、レイの心に哀しみの感情を呼び起こした。シンジが追いかけてくれた『わたし』は、 果たして『わたし』なのか?人造人間の『わたし』でシンジはいいのか?シンジに見捨てられたら『わたし』は、『わたし』の心はどうなってしまうのか?止め どなく浮かぶ負のイメージが、レイの頬に涙を伝わせる。
 実際、恐るべき情報収集力によって、既にシンジはレイの正体を把握し、その製造目的と計画立案者を特定していた。それは複雑に絡み合った感情の集積で あった。誰が悪いという訳ではないが、レイがその犠牲になるのはシンジが納得しなかった。シンジは全てを理解した上で、レイ奪還に乗り込んで来ていたので あった。が、レイはそれを知らない。レイの心配は杞憂なのだが、それを知らない。
 知らぬが故の涙は止まる事無くレイの頬を濡らして、夜が静かに過ぎてゆくのであった。










 レイがひとり枕を涙で濡らしている頃。
 隣の葛城邸には、人気がまったく無かった。
 住人は、ネルフ本部作戦本部長執務室にて蠢いている。シンジはミサトを執務室にて発見、静かに侵入を果たし散らかり放題散らかった部屋でお仕置きを開始 していた。
 寝ているミサトに目隠しをかませた上、全裸に剥いて重く豊かな乳房が砲弾型になるように縛り上げ、脚を太股とふくらはぎがくっつくように縛って固定す る。口には猿ぐつわ。眼だけが見開かれている。
 前へ。
 後ろへ。
 縦に。
 横に。
 斜めに。
 逆さに。
 折り曲げられて。
 回転させられて。
 ガスガスと、ズブズブと、グチョグチョと、ヌトヌトと、グルグルと。
 とにかく、一通り考えられる角度から突き込まれ、ミサトは白目を剥いて再び夢幻の園を彷徨う事になってしまった。
「・・・・・まあ、趣味ではないが、お仕置きということだったからな・・・いいだろ。」
 碇シンジは表情も変えずに、もう一抉りすると白目のままのミサトは敏感に身体を跳ね上げるのであった。
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 数日後。
 ミサトとリツコは、JAの発表会を欠席した。
 いわずもがな、シンジに虐められてしまっていたからである。
 予定調和という言葉があるが、まさにその通りにJAは暴走し停止した。某組織の思惑通りに。
 端折って端折って、ついにアスカのお迎えへと雪崩れ込む。
 果たして、アスカの運命は?シンジはアスカをどうするのか?
 それは・・・決まってない。





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