アスカ・リターン

製作 越後屋雷蔵

プロダクション・モデル03


「来たね・・・・・・」

初号機と共にセントラル・ドグマに降下していく渚カヲルは呟いた。

「まもなく、惣流さんが追いつくよ・・・・僕が答えを出さなくてはいけない のか、それとも彼女が出してくれるのか・・・・・・」

カヲルは苦笑しつつ、

「どのみち、しておかねばならない事はしておくことにしようか・・・・・」

と、さらに呟いた。

そして、降下中に弐号機が追いついた。

「渚っ・・・・待ちなさいっっ・・・・」

アスカが叫ぶ。

「やあ、待っていたよ。惣流さん・・・・」

初号機がプログレッシブ・ナイフを抜いて斬りかかる。

素早く応戦する弐号機。

ナイフがぶつかり合い、火花を散らしている。

(いけない・・・初号機にはシンジのママが・・・・)

「心配いらないよ。彼女はまだ眠っている・・・・起きていたら僕なんかが意 のままに出来るはずがないからね・・・・」

白い塩の砂浜のようなドグマに着地する二機のエヴァンゲリオン。

カヲルはその赤い瞳を一層紅に染めて力の一部を解放する。




「セントラル・ドグマ。通信、映像、管理システム全て不能。」

司令所では事の成り行きも見守る事が出来なくなっていた。

「・・・・まさに、結界か・・・・」

「すべては、惣流の肩に掛かったのか・・・・・」

冬月副司令の呟きが、空しく消える。




「もう、何を話しても大丈夫さ。」

弐号機が初号機ともみ合っているうちに、開かれたヘヴンズ・ゲートを抜けて 磔にされたリリスの前に浮かぶカヲル。

いきなり電源が落ちたように動かなくなる初号機。

一瞬の間を置いて、カヲルを追った弐号機に掛けられた言葉がそれであった。

「どういう事?」

「どういう事とは僕の方が言いたいセリフだよ、惣流さん・・・・」

「あんたは、なにしにきたの?」

「僕は使徒だからね。人類に破滅をもたらしに来たのさ。」

「でも、人類も使徒だわ。リリスより生まれし不完全な使徒、リリン。群体で なければ生きられない弱い存在・・・・・」

「よく知っているね・・・・」

「あたしは何でも知ってるのよ・・・・」

「じゃあ、選ばれし種は一つしか残らない事も?」

「そう言われるのは知ってる。けどね、それは間違いなのをあたしは知ってい るわ。」

「間違い?」

「そうよ。」

「君は人類と使徒の共存が可能だと思っているのかい?」

「思うじゃないわ。可能なのよ。」

「どうして、そんな事を思うのかな?」

「最後の使徒があんただから・・・・」

数瞬の間が空く。

「そう言ってくれるのは、本当にうれしいね・・・・だが、僕はやらなければ ならないことをするだけなのさ。」

「でも、それすら狂いが生じているわ。」

アスカの言葉にカヲルは怪訝そうな眼で見返している。

「本来、ゼーレはあんたの殲滅を初号機とシンジにさせるはずだった。でも、 それは果たされずに、残るのはあんたとアダムの融合だけ。それも、今潰えたの は分かるわよね。」

「・・・・・・・」

「そこに磔になっているのはリリス。綾波レイの体組織の元。第三使徒から第 五使徒までの母なる存在。あんたが融合すべきアダムは既に無い・・・・」

「なるほど・・・・・でも、まだ出来る事が一つあるんだよ。」

「えっ・・・」

「未来を君たちに託して死を選ぶ事さ・・・・・初号機をもう一度動かして、 君に僕を殺させる・・・・・今の僕の最後に出来る事・・・・・」

「させない。あんな未来託されても意味がない・・・・・だから、あんたは殺 さない。あたしが死んでも・・・・・」

キラリとカヲルの視線が、一瞬鋭く光った。

「あんな・・・未来?・・・・」

カヲルは少し考え込んで、言った。

「ねえ、惣流さん。プラグから出てこないかい?その辺の砂浜に座って話をし たいね。」

「エヴァを止めろって言うの?」

「今の僕と同じ条件にならないかって事さ。僕は初号機止めているし、外にこ うして出ているじゃないか。それに死を覚悟しているなら、平気だろう。」

「ふん・・・」

アスカは弐号機を俯せにさせ、プラグを排出して外に出た。

「さあ、あんたもそんなとこに浮かんでないで、さっさと降りてきなさい。」

アスカが叫ぶと、カヲルは砂の出ている位置まで空中を移動すると、いきなり 自然落下させたのだった。

砂塵を巻き上げて着地するカヲル。

「そこらに座って話そうよ・・・・・」

カヲルは白い砂の上に座ると、コロンと横になった。

アスカもそれに倣って横になるが、忌まわしいあの記憶が蘇りすぐに膝を抱え て起きあがった。

「白い砂浜に横になるのって、あんまりいい記憶がないのよ・・・・・・」

沈んだ表情を浮かべているアスカ。

そんなアスカを見ていたカヲルは、ふと呟く。

「未来の・・・・記憶?・・・・・」

驚いた表情で、カヲルを見るアスカ。

「なんで、そんな事を・・・・」

「自分で言ったじゃないか・・・・あんな未来託されても意味がないってさ・ ・・」

「ちっ・・・よく聞いてるわね・・・・」

「話してくれるかい・・・・・」

アスカはチラッとカヲルに視線を投げ、その表情に翳りのないことを見て取り 、話し始めた。

「簡単に言うわね。信じる信じないはあんたの勝手だけど・・・・・あたしの 精神は人類補完計画が発動して、全てが終わった時から飛んできた精神なの。一 度、この世界を経験してきているのよ・・・・・・」

「補完計画が?発動した?」

「そうよ・・・・」

「じゃあ、僕はどうしたのかな?」

「あんたはシンジに殺されたわ。もっともあたしはその時精神崩壊していてね 、その場面はよく知らないんだけど・・・・」

「・・・・・・・・」

「あんたが初号機に握りつぶされた後、シンジもボロボロになっていたわ。そ んな隙を突いてゼーレが戦略自衛隊を動かしてネルフに侵攻してきた。入院して いたあたしはいつの間にか弐号機に乗せられていて、爆撃で眼が覚めたわ・・・ ・・」

その後の自分の殺戮を思い出したのか、アスカはブルッと身を震わせる。

「弐号機のコアにママがいるのを感じて、あたしは復活した。そして自衛隊を 蹂躙したわ。でも、ゼーレがそれだけで済ますはずがなくて、量産型エヴァを投 入してきた。あたしは調子に乗ってそいつらを叩きのめしてやったけど、ロンギ ヌスの槍がね・・・・眼に刺さって・・・・フィールド突き破って・・・・量産 機、槍のコピー持ってたの。内蔵バッテリーが切れて動けなくなった弐号機は眼 に刺さった槍で支えられた状態で止まったわ。」

アスカの眼に涙が、一筋光る。

カヲルは黙って聞いている。

「あたしは・・・・死にものぐるいで手を伸ばしたのよ・・・・・あいつらを 殺してやりたくて・・・・空を飛んでたの、量産機が・・・・・槍も飛んできた の、あたしめがけて・・・・・いっぱい刺さったと思うの・・・・・もう、意識 はなかったけどね。」

一呼吸置いて、続けるアスカ。

「・・・・その後はレイから移った記憶じゃないかと思うんだけど、弐号機喰 われちゃってね・・・・シンジがミサトに諭されて初号機で出てきた時には、弐 号機はほとんど跡形もなかったみたいなのよ。それ見てシンジがまた壊れちゃっ てね。依代になったシンジと初号機が量産機に空に連れていかれたの。レイはリ リスと融合して巨大化して初号機を取り込んだわ・・・・・・・」

「そして、補完が始まったんだね・・・・・」

「そう、補完の中でシンジとレイがどんな話をしたのかまではわかんないけど 、あたしが気づいたら赤いLCLの浜辺でシンジと横たわっていた・・・・シンジ はあたしの首を締めたけど、どうにもできなかった・・・・・あたしは気持ち悪 かった、気分が悪いっていう意味でね。そう言ったらシンジが泣き出して・・・ ・・・」

「それで?・・・・・」

「あたしは、こんなのは望んでいない、あたしはもちろんシンジもレイももっ と幸せになる権利があるはずだって思ったわ。遠くなっていく意識の中で、みん なの幸せを願い、もう一度やり直したいと願った。そしたら、家のベッドの上で 目覚めたって訳なのよ。」

「波瀾万丈ってやつだねえ・・・・・」

「そんな訳で、当面シンジとレイをきちんとくっつけないといけないから、色 々立ち回ったんだから・・・・あの二人が補完計画の鍵だからね。」

「それは成功しているみたいだね。」

「信じる?」

「信じるも何も、君がそう言うんならそうなんだろうね。」

ジッと見つめ合うアスカとカヲル。

しばらくの静寂が過ぎて。

「どうするの?」

アスカは言った。

「どうするって?」

「あんたはこれから、何をするかって聞いてるのよ。」

「僕?僕は・・・・ふふふ、もう僕がするべき事は、全てを君に委ねる事くら いかなあ。君は僕をどうしたいんだい?」

「む・・・・、どうしたいってねえ・・・・そうだ。あんたも協力しなさいよ 。あんたの身の上は全て終わってからゆっくり考えればいいわ。」

「大丈夫なの?僕はもう使徒に認定されてるんじゃないかな?」

「気にする事ないわ。大体碇司令の命令はここに使徒の侵入を阻止せよって事 だったからね。殲滅じゃなかったから。つべこべ言わないで力を貸せばいいのよ 。」

「わかったよ、惣流さん。じゃあ、行こうか、歴史を変えに・・・・・」

カヲルが立ち上がる。

アスカも立ち上がった。

「あたしのことは、アスカって呼びなさい、カヲル。あんたは今からあたした ちの仲間になったんだからね。」

カヲルは楽しそうに微笑みながら答えた。

「そうだね、アスカ。仲間だね。」






その後、アスカはカヲルを肩に乗せた弐号機でターミナル・ドグマを後にする 。

昇降ロープで上昇する時に連絡を入れた。

「こちら、弐号機。聞こえる?司令所・・・・」

「アスカ!!無事なの?」

ミサトの緊迫した声が飛び出てきた。

「ピンピンしてるわよ。司令の命令は完了したわ。後で司令と話があるから連 絡入れてアポとっといてね。」

「ああ、司令からあんたに召集掛かってるわ。丁度よかったじゃないのよ。」

「そう。」

「ところで、アスカ。彼・・・殺したの?」

「はあ?」

「カヲルくんよ。」

「殺してないわよ。肩に乗ってる。」

「・・・・・・どういう事よ。彼は使徒なのよ。」

「あたしは司令の命令を遂行しただけよ。使徒の侵入を阻止しろってね。もう 、こいつは使徒じゃないし・・・・・チルドレンよ、こいつも。」

「アスカっっっ・・・・」

「パターン青じゃないでしょう。使徒じゃなくなったのよ、こいつは。」

実際、カヲルはパターンなんぞはいくらでも変えられるのであるが、彼はあえ て黙っている。

いつまでもギャーギャー騒ぐ司令所との通信回線を切って、アスカとカヲルは ゲンドウの待つ総司令執務室へと向かっていった。







総司令執務室。

アスカとカヲルが部屋の前に立つと、自動でゆっくり扉が開いた。

部屋に入るなりアスカは言った。

「任務終了しました。フィフス・チルドレンは無事救出し、使徒のドグマ侵入 は許したものの殲滅に成功、被害はありません。」

「僕に取りついていた使徒も、惣流さんのお陰で殲滅することができました。 これからはチルドレンとして任務を全うしたいと思います。」

カヲルもいけしゃあしゃあと言い切る。

「・・・・・・・・・・・・」

サングラスの奥から鋭い視線が二人を突き刺す。

交互に二人の顔を見ながら、ようやくゲンドウは口を開いた。

「ご苦労だった。二人とも休んでくれ。」

アスカとカヲルは、顔を見合わせてニヤリと笑った。

「「失礼します・・・」」

二人はきびすを返して立ち去ろうとした、その時、

「言わずもがなの事だが、ターミナル・ドグマの内部については一切他言無用 だ。」

ゲンドウの声が掛かる。

それを受けて、カヲルが言う。

「もちろんです、司令。ああ、そうそう、ゼーレの計画では最後の使徒が殲滅 後一週間程度で、MAGIのハッキングによるネルフ介入が行われる様子ですよ。」

「ハッキングだと?」

「ええ、僕がこちらに来る前に、そんな事話していたのを小耳に挟んだんです 。」

「こちらはオリジナルだぞ。赤木博士もいる・・・・・」

「無論、すんなり成功するとは彼らも考えてはいないですね。すぐさま戦略自 衛隊による侵攻も開始されるでしょう。むしろ、そっちの方が問題ですね。」

カヲルはさりげなくゼーレのプランを披露する。

アスカはボソッと何気なく呟きを洩らした。

「リツコ、どこに行ったのかしらね・・・・・・・姿が見えないけど。稼働で きるエヴァは初号機と弐号機のみ・・・・・さて、戦自が来たときどうするのか しら・・・・」

アスカはチラリとゲンドウを見る。

なにやら考え込んでいる様子だ。

アスカはカヲルとアイ・コンタクトを取ると、おもむろに切り出した。

「ねえ、カヲル。そいつらシンジを使ってなんかしようとしてるって言ってた でしょ。シンジなんか使っても何もできやしないでしょうにね。」

「ん〜、そうだね。今のシンジくんじゃどうにもならないね。レイちゃんも候 補だったけど、シンジくんもレイちゃんも心に芯が入っているから、依代にはな らないね。」

ゲンドウはサングラスの中の視線を、一際鋭くして二人を見つめていたが、や やあって言葉を吐き出した。

「おまえたちは・・・・・なにを知っている?そして、その目的はなんだ?」

アスカはニッコリ微笑むと、

「流石司令。物分かりが早いわ。」

アスカは話し出した。

自分がサード・インパクト、補完計画実行後の世界から戻ってきた精神を持つ 事。

そして、シンジとレイを救う事を主眼において、補完計画挫折を目論んでいる 事。

現在計画の核であるレイとシンジは、精神的に安定しており依代にはなり得な い事。

「そうか・・・・・・計画は失敗したのか・・・・・・」

ゲンドウは椅子の背もたれに寄りかかり、手を組んで眼を瞑った。

アスカはいささか驚いていた。

(こんな非常識な話を簡単に受け入れられるとはねえ。司令ってばただ者では ないって事ね。)

しばらくの静寂の後、ゲンドウは口を開く。

「惣流・アスカ・ラングレーならびに、渚カヲルは総司令直属とする。その方 が動きやすいだろう・・・・・」

「では、司令?」

「失敗すると判っている計画なぞ、わたしには一片の価値も無い。だが、根本 的なわたしの願いまで放棄した訳ではない。おまえたちにはそちらで最大限の協 力をしてもらう。」

カヲルは言った。

「シンジくんのお母さん、碇ユイさんのサルベージですね。」

「そうだ。それさえ叶えられれば、他の事はどうでもいいのだ。幸いな事にレ イはリリスと融合していないから使徒としては不完全だが、渚くんという使徒の 力を内包した「人間」がいるのは、修正したわたしの計画に大きな力になるだろ う。」

「ゼーレがちょっと邪魔ですね。」

「せめて加持さんが生きていてくれたら・・・・・・」

ゲンドウが少し怪訝そうな表情を見せて言う。

「加持?まるで奴が死んだような口振りだが、加持はこちらで拘束しているだ けだ。死んではいない。葛城くんと組まれるのは少々厄介だったからな・・・・ ・・」

「ほ、ほんとですか?」

「うむ、今になってみれば始末しなかったのは幸運だったな。対ゼーレの諜報 活動には最適な男だ・・・・・・」

かくして、アスカの一人で進めてきた修正計画は、カヲル、司令、加持を巻き 込んでの対ゼーレ殲滅計画へと変貌を遂げつつあった。











そして。

加持リョウジ率いる諜報部保安部合同秘密部隊”隠密同心”は加持の指揮の元 、諜報部はゼーレ要人の暗殺を担当し、保安部は戦自侵攻に備えて警備&トラッ プの設置に余念がなかった。

MAGIの操作は伊吹マヤが一時指揮を執っていたが、密かに新たな目的を与えら れた赤木リツコ博士によって世界の通信網にトラップを入れる事に成功。ゼーレ からの指令は完全に分断されたのだった。

これにより、戦自のネルフ侵攻は無くなり、諜報部の暗殺も秘密裏に成功し、 エヴァ量産機投入も阻止されたのだった。

邪魔する者がいなくなって、自由に行動出来るようになったネルフは早速碇ユ イのサルベージに着手。それに成功する。

同時にゼーレの権力をネルフに移管し、影の秘密結社として(いまだに国連の 一機関としての体裁は維持している)世界に君臨することになったのだった。

綾波レイを含む碇ファミリーは感動の再会を果たし、一連の使徒侵攻は終わり を告げた。







終結の日から、三日後。

アスカは原因不明の病気で倒れた。

著しい体力の低下と、発熱。

アスカの意識は、暗い闇と明るい光の中を往復していた。

明るい光の中から、自分を呼ぶ声が聞こえる気がしていた。

眼を開ければ、そこには仲間がいた。

「シンジ。レイ。カヲル。ミサト。リツコ・・・・・・・なんかあたし・・・ ・ダメみたいよ・・・・・」

ベッドの上に横になって、うわごとのように呟くアスカ。

廻りにいた仲間たちの顔が一斉に強張る。

「な、なに言ってるんだよ、アスカ・・・・・」

シンジが弱々しく言葉を掛ける。

「・・・・・あなたは・・・もっと、生きるべき人・・・・・・」

レイは無表情に近いが、紅い両目から滂沱の如く涙が溢れ出ているのを止めよ うもなかった。

「二人とも・・・・ありがと。でも、あたしはいいのよ。あんたたちの幸せな 顔が見たかっただけだしね・・・・・・願いは叶ったの・・・・・・」

「カヲルくん。何とか言ってよ・・・・・」

シンジは傍らのカヲルに声を掛けさせようとするが、カヲルはそっとアスカの 手を握りジッとその蒼い瞳を見つめる。

そして、なにも言わずにアスカの頭を軽く撫でて、発熱のためかすっかり冷た くなった額にキスをして立ち去っていった。

「ありがとう、カヲル。でも、きっとまた・・・・・・」

アスカはそう呟いて、ゆっくり眼を閉じる。

微かな命の灯火を記録し続けていたメーターの音が連続音に変わり、レイの号 泣とシンジの啜り泣きが病室を埋め尽くしていた。

病室を出て、休憩所に佇んでいたカヲルは呟く。

「二人の幸せのために舞い戻った赤い天使・・・・・・でも、きっと君にも幸 せは訪れるはずさ。そう、今は君のいるべき時間ではないのかもしれないね・・ ・・・・」

いささか寂しそうではあったが、確信に満ちたカヲルの呟きを聞いている者は だれもいなかった。





















6年後。

晴れて結婚して、碇レイとなっていた旧姓綾波レイと碇シンジに子供が生まれ た。

前々から子供の名前は考えていたが、生まれてきた子供を見て二人は苦笑する しかなかった。

「・・・・・・やっぱり、考える必要なんかなかったわね、あなた・・・・・ ・・」

「ホントだね。もう始めから決まっていたようなものだもの、これは・・・・ ・」

生まれた子供は女の子。

金色に輝く髪を持ち、そのつぶらな瞳は透き通るようなブルー。

神様仏様の悪戯か、二人がその娘に”アスカ”と名付けたのは言うまでもない 事であった。

きっと、この娘は幸せに育つだろう。

両親のために力を尽くして逝った美しい少女の魂と共に。




後書き

尻切れトンボになりました。

まっことに、申し訳ありません。

出来るならば改訂版を、製作したいと思う今日この頃。

怒らないでください、お願いします。



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