レイ・リターン

製作 越後屋雷蔵

プロト・タイプ26


ここは病院。

内科病棟、303号室に彼女は入院していた。

彼女、惣流・アスカ・ラングレーは先日の地獄の出所祝大宴会に於いて、果敢 にも葛城ミサトに飲み比べを挑み、そして敗れた。

それも、惨敗。

D型装備になったミサトを侮った見返りが、この入院であった。

激しい嘔吐による体力の減少。

それに伴い、点滴による栄養補給が行われ、ゲッソリやつれ果てた彼女はこの 時点で劇場版「シト新生」冒頭のシーンを行っていた。

違う所は、訪れるのがカヲル主体でシンジやレイに比べると、カヲルのお見舞 いがかなり頻繁な所だろう。

それともう一つ。彼女の意識は完全に回復しており、後は体力の復帰を待つだ けであった。

病室の扉が、音もなく開き蒼い髪赤い瞳の少女が、一人で姿を現した。





「ん?レイ、どしたの?一人なんてめずらしいじゃない・・・もう、粗方復活 する頃じゃないの?」

アスカは入ってきたレイに向かって問いかけた。

「・・・・・ええ、それでも司令所にいるのは、赤木博士と葛城(牛)さん、 それと日向さん・・・・・」

アスカはちょっと驚いた声を出す。

「ひゅ、日向さんって、あのメガネののほほんとしたのでしょ。お酒そんなに 強いのかしら・・・・リツコとミサトは人間外だから解るとしても・・・・」

「・・・博士が処世術とか言っていたわ。日向さんったらあんまり飲まないで 注いでばっかりいたし・・・・・」

「はあ〜、影の薄いキャラだからかなあ・・・・・そんな事できんのは・・・ ・他の連中は?」

「・・・みんな出てきてるみたいだけど、渚くんが悲惨ね。人生の悲しみを一 身に背負ったような顔で歩いていたわ・・・・もっとも、アスカの前ではそんな 顔見せないと思うけど・・・・・優しいからね・・・・」

最近覚えたゲンドウニヤリを炸裂させるレイ。

「それ止めなさい。シンジのニッコリならまだしも、司令のニヤリは危険過ぎ るわ。」

「・・・そう・・・・」

実は結構気に入っていたレイだった。

「んで、今日はどしたのよ。」

アスカに促されて、レイは顔をちょっと紅色に染めながら前回までのいきさつ を話した。

「・・・・・かくかくしかじか・・・・・・」

「ほっほ〜、シンジのにぶちんが遂にそんな事をしでかすようになったの・・ ・・・」

前々回の話の途中で、アスカは口を挟む。

「それで・・・・ひっひっひ・・・あんた、どうだったの?」

不気味な笑いを浮かべるアスカ。

レイは思う。ニヤリよりそっちの方が危険だと。

「・・・どうって?・・・・」

「偶然じゃなしに、初めてシンジに揉まれて吸われて、どんな気持ちだってっ て聞いてるのよ。」

ニヤニヤは止まらない。

「・・・・・・・・・」

顔を、今度は真っ赤にして途切れ途切れに話し出すレイ。

「・・・・あのね・・・キュって握られた時・・・・その・・・体が・・ビク ッって・・・勝手に動いて・・・・・それで・・・ペロって・・・口の中に・・ ・・入ったら・・・・・電気が走ったみたいに・・・・背筋が・・・・・いやん ・・・・・」

レイはアスカの耳元に口を寄せて、

「・・・・・・・・」

「ええっ〜、そ、そんなに・・・なんの?・・・・」

「・・・でね・・・・・・・・・・・・・」

「うん、うん・・・・え、あんた手握られただけで下着がそんなに・・・・・ それで、それで・・・・・」

「・・・・・・・でも、それは碇くんだけなの・・・・・・」

「・・・・あんた、下着の換えが大変ね・・・・・・他の人では、ならないの ね・・・・」

「うん・・・・変?」

「う〜む、他の人間にでもそうなるなら変なんだろうけど・・・・なんとも・ ・・・じゃ、あんたシンジに抱きしめられて眠ったりしたら、大変じゃないの・ ・・・」

「・・・・大丈夫・・・・大抵、気絶してるから・・・・・」

「なんだかなあ・・・それで・・・・うん、うん・・・・あそこが・・・・・ うわっ・・・・ああ、そうそう・・・・そんな感じなのかあ・・・・・」

「・・・・でね、その感じと言ったら、もう・・・・***で***が*** *な****みたいになっちゃうの・・・・・」

「う・・・う・・・・う・・・・」

「・・・****が****を走って****なの・・・・・・」

「・・・くうっ・・・・じゃ、******はどうなの・・・・」

「・・うふっ・・・そりゃもう*****よ・・・・・」

「*********」

「*******」

「*****」

以下、****の羅列により省略。

読者さまのご想像にお任せ。





「ゼエ〜・・・・ゼエ〜・・・・で、結局あんたのろけに来た訳?・・・・・ 病人相手にあんな刺激的な話なんかぶちかましちゃって・・・もう・・・」

アスカは顔を赤くして、脂汗を流しながらレイを睨む。

「・・・・ふう・・・はあ・・・・ふう・・・・アスカが・・・それから、そ れからって言うから・・・・・恥ずかしい・・・・」

レイも顔を真っ赤に、瞳を潤ませながらアスカを見る。

読者さまの想像通りの話をしていた二人は、肩で息をしながら呼吸を整える。

「だから、結局ど〜だって言うのよ・・・・」

「・・・・・・客観的に一連の話の流れを総合して考察した場合、いわゆるお 肌の曲がり角と呼ばれる年齢に達した女性は、時間を掛けた生殖行為によって肌 の張りを回復するということで、わたしくらいの年齢の女性はむしろなにもしな い方が結果は良好であるということなんだけど・・・・・」

「分かってるじゃないの。」

「・・・ええ、落ち着いて考えたら分かった・・・・・」

「で?」

「・・・・・時たま、アスカって妙に綺麗な時があるの・・・・・」

紅い瞳をカッと見開いてアスカを見るレイ。

「・・・・・白状しなさい・・・・わたしと碇くんの事ばっかり聞いて、あな たは何も渚くんとの事を話さない・・・・・吐け。何をどうしてどうしたらどう なったか、克明に白状するのよ・・・・・・」

引きつった表情を浮かべるアスカに、尚も迫るレイ。

「・・・・・も、もう、何回くらい・・・・し、したの?・・・・・」

どもりながら、顔を赤くしながら問うレイ。

愕然とした表情を浮かべ、一瞬で下を向くアスカ。

数瞬の後、彼女は・・・・

「あ、あのね・・・・・あ、あのバカ・・・・なんにもしないのよ・・・・・ 」

アスカの肩が、怒りのためか悲しみのためか、小刻みに震えている。

「・・・・・・で、でも、この間わたしがアスカの部屋に行った時、ソファで 妖しげな事してた・・・・・」

「なんで知ってんのよっっっっ・・・・・ミサト病が、うつったのね・・・・ ・こいつまでとは・・・・・」

レイは知らん顔で部屋の中を、視線を泳がせている。

「まあ、いいわ。あの時は・・・・確かにキスしてくれたわよ。すんごいのを 。魂がとろけるようなキスしてもらったわよ。でも、それだけ・・・・・あの時 あんたが乱入しなけりゃ今頃はもうお・と・な・・・・だったかもしれないのに い・・・・・」

「・・・・・え、じゃあ、いまだに、何もナシ?・・・・・」

「はい、はい。そうですよ。そっちの方はあんたらの方が先行ってるわよ。」

ギラリと輝くレイの紅い瞳。ニヤリと歪むレイの唇。

だから、ニヤリはやめろってば・・・・

「・・・・・わたし、初めての時どんなものか聞こうと思ったんだけど、そう いう状態ならばわたしが一肌脱がねばならないわね・・・・・くっくっく・・・ ・まかせて・・・」

「ちょっ、ちょっと、何するつもりなのよ・・・・」

妖しいオーラを漂わせ始めたレイを、引きつった顔で見るアスカ。

ユラリと立ち上がってドアに向かうレイ。

プシュウ〜

開いたドアの前で、振り向きながらレイは言った。

「・・・大丈夫・・・わたしたちにまかせて・・・・ふっふっふ・・・・」

出ていくレイの後ろ姿を見ながら、アスカは考える。

(わたしたちって言ったわね・・・・あいつの他誰が・・・・シンジ?シンジ だけじゃこの手の話は役立たずだわ・・・・まさか・・・・まさか・・・・ミサ トやリツコ?)

アスカは今、断崖絶壁から落ちていく感覚を味わっていた。

擬音にすれば、こうだ。

ガビ〜ン

そうして、アスカの意識は絶望感と共に、暗い闇の中に落ちていくのであった 。







ここはネルフ第六小会議室。

五人の人影が見える。

綾波レイ。

葛城ミサト。

赤木リツコ。

伊吹マヤ。

そして、碇シンジ。

レイが口を開いた。

「・・・・・皆さんはご存じでしょうか?弐号機パイロット惣流・アスカ・ラ ングレーと参号機パイロット渚カヲルの関係を・・・・・」

ミサトが言う。

「知らないはずないでしょう。アスカの顔みりゃすぐわかるじゃない。」

リツコも続ける。

「まあ、あんたたちほどではないにしろ、結構モロバレね。無様だわ。」

マヤも言った。

「レイちゃんとシンジくんの、初々しいんだけどベッタベタっていうのも悪く ないけど、付かず離れずそれでいてバレバレなのが、またいいわあ。」

自分たちの方に矛先が向かぬ内といった風情で、シンジが尋ねた。

「それがどうかしたの?綾波。」

「・・・実は、わたしがアスカの病室に行った時、アスカが言ったんです。ま だ、キスしかしてくれない、一緒にいてくれるのはいいけど、ホントに自分を愛 してくれているのでしょうかって・・・・・わたしは自分が、みのもんたになっ たような気分でした。アスカはわたしの大事な友達・・・・なんとか力になって あげたいって思っていたんですが、アスカはわたしの能力を超える要求をしたの です・・・・・」

レイは一呼吸置いて続けた。

「・・・・したいのって・・・・・・」

静まり返る小会議室。

「・・・・これは、もうわたしでは如何ともしがたい事なので、経験豊富なお 二方と技術知識豊かな方にご相談せねばと考え、ここにお集まり頂いた次第なの です・・・・・・」

リツコが事情を飲み込んで、言う。

「なるほどねえ。アスカはしたいが、カヲルくんは動かない。かと言ってアス カから求めるような真似は出来ないわね、あの娘の性格では。」

「簡単じゃないのお。二人っきりになってアスカが裸になってカヲルに飛びつ いてオッケーじゃないの。」

「不潔・・・・葛城さん、そういうもんじゃないですよ。もっとムードが必要 なんです。初めての時は優しいムードの中ゆっくりと・・・・・」

マヤがトリップを始めそうになる。

「・・・・・と、まあそんな訳で、無理なくアスカと渚くんをさせてあげたい ので、ご協力お願いしたいのです・・・・・・」

ミサトが立ち上がって言った。

「いいわ。やるからにはアスカとカヲルくんには徹底的にしてもらいましょう 。これ以後、この作戦はLAKオペレーションと呼称します。作戦立案、行動の指 揮はあたしとリツコが取るわ。」

「そうね。じゃあ、アスカが退院次第に行動に移りましょう。ふふふふふ・・ ・・マヤには最終作戦行動地点のセッティングをお願いするわ。思いっきりムー ド盛り上げてね。」

「わかりましたあっっ!!」

マヤは瞳に炎を燃やしながら答える。

やる気満々の三人だった。

意気揚々と小会議室を、三人が出ていった後、シンジがようやく口を開いた。

「ねえ、綾波。何でこのオペレーション、ぼくも参加させられたの?この手の 作戦には、ぼくは不向きだと思うんだけどなあ・・・・」

レイはまた頬を赤らめて言ったのだった。

「・・・・・だって、これは・・・・近い将来わたしたちも・・・・・必ずす る事だし・・・・その・・・・やっぱり、一緒に見ておいた方が・・・・・いい ・・・・・」

俯いてスカートの端を弄びながら言うレイのかわいさに、悩殺されそうなシン ジはようやく言葉を返すのだった。

「そ・・・そう・・・だね・・・・・ち、近い内・・・・」

シンジの心の中の表情は、もうデロンデロンににやけているのであった。

無理もないが。






そして、数日が過ぎ・・・・・

アスカが退院してきた。

アスカがネルフ司令所に足を踏み入れると、なにやら甘い香りがそこはかとな く漂っている。

「ん〜、良い香りがする・・・・・」

アスカが呟くと、オペレータ席に座っていたマヤが答えた。

「いい香りでしょ。殺風景だからせめて香りくらいいいかなって思ったの。」

「へえ・・・・よく、司令が許可したわねえ・・・・」

正しく言えば、許可されてはいない。

リツコのMAGIによる操作で、しばらく副司令と共に第二新東京に出張させられ ているのだ。

ちなみに、この香りは「イブキ・ビューティ・スペシャル」と銘打たれた、リ ツコ直系のマッドなオペレータ・マヤ製作による媚薬効果満点のコロンであった 。

「マヤ。他の連中は?」

「アスカのシンクロ・テストの準備してるわよ。そろそろ行かないと・・・」

「ああ、そうだったわね。」

アスカは頷いて、控え室に歩を進める。

その背後では、マッド・オペレータ伊吹マヤが、ゲンドウニヤリをぶちかまし ていた。

「モンキー、ただいま控え室に移動中。ホルスタイン準備はいいですか?」

「ホルスタインオッケー」

ミサトの声がマヤのヘッドホンに響いた。



「しかし、ホルスタインはないでしょ、ホルスタインは・・・・・」

「仕方ないじゃない、あみだくじで決まったんだから。」

ミサトの抗議をリツコが封じる。

少しでも気分を出そうと言うことで、暗号名まで付けているのであった。

ミサトはホルスタイン。

リツコはクロコダイル。

シンジはキャット。

レイはイーグル。

マヤに至っては、フライだった。

「それにマヤに比べりゃいい方よ。フライよ、フライ。」

「そりゃそうだけどね・・・・・」

「あんたにピッタリじゃないの。凶悪な程の巨乳だし・・・・・」

「はい、はい・・・・キャットにイーグルは準備いいの?」

ミサトは控え室にいるシンジを呼び出す。

「は〜い、いいですよ〜」

「じゃ、急いで・慌てず・正確に・・・でよろしく。」

「了解。」



「そ、そろそろだね・・・・・」

「・・・・ええ・・・・・」

アスカの控え室到着十秒前。

「じゃ、いくよ。今日は気絶しちゃ駄目だからね。」

「・・・は、はい・・・・」

ゆっくり近づく顔と顔。

むっちゅ〜うううううう

抱きしめるシンジ。

シンジの背中に廻されるレイの細い腕。ピクピク痙攣している。

彼女は耐えていた、気絶しないように。

ウイ〜ン

「さ〜て、テスト、テストっと・・・・どっどっどっど・・・・・」

入ってきたアスカは、いきなりシンジとレイのキス・シーンを目の当たりにし た。

石化するアスカ。

心臓だけが早鐘を打つが如く、激しく動いていた。

ウイ〜ン

扉が閉まり、シンジがレイの口を離してアスカの方を向いて言った。

「あ、アスカ。来たの。よかったね、復帰出来て。」

真っ赤になって、廻らない呂律で答えるアスカ。

「う、あ、ありゅがとにぇ・・・・あ、あたしが・・・いないと・・・・ほ、 ほら、し、使徒が来た時・・・・その・・・大変じゃない・・・・・」

手足を同時に、同じ方向に出しながらロッカーに向かう。

明後日の方を向きながら、アスカは言った。

「ほ、ほら・・・・早く着替えないと・・・・・」

「あ、うん、そうだね。綾波をなんとかしてと・・・・」

アスカはシンジとレイの方を、チラチラ盗み見ている。

何をするのか、好奇心満点の眼差しである。

(うおああっっっ・・・・)

アスカは心の中で叫び声を上げた。

「綾波、ほら、しっかりして。着替えないとね・・・・」

シンジはレイを自分の膝の上に座らせて、抱きしめるように、キスするように 声を掛けているのであった。

体はピッタリ密着している。

(シンジが・・・・シンジが・・・・変になった・・・・こいつが、レイとこ んなに密着して平気な顔してるなんて・・・・・しかし・・・・いいなあ・・・ )

知らず知らずの内に、アスカの眼はくわっと見開かれ、シンジとレイを凝視し ていた。

ようやくなんとか回復したのか、レイがアスカの視線に気が付き顔を上げる。

「・・・・はへ・・着替え・・・・ね・・・・」

名残惜しそうにシンジから離れるレイ。

よろりら〜よろりらり〜

「大丈夫?綾波。」

シンジがレイに駆け寄って肩を抱き寄せる。

それもアスカの目の前で・・・・・・

かつてない程の濃厚ないちゃつきを見せつけられるアスカは、もはや呆然とす る他為す術がないのであった。

しかし、アスカの心中を占めるのは怒りではなく、ただただ羨ましさであった 。

(いいな。レイのあの幸せそうな顔。眼はトロンとして、もうど〜にでもして って感じねえ。シンジいつもこんな調子でレイをかわいがっているのかしら・・ ・・・)

「綾波。ぼくが着替えさせてあげようか?」

シンジの言葉に、ハッと我に返るアスカ。

「まで、まで。いぐらなんでぼ、ぞればまずいだろべ。あだしがづれでぐがら ・・・・」

動揺のためか、何人なのか分からなくなっているアスカである。

シンジから引き離すようにレイを連れて更衣室に移動するアスカ。

「・・・ぷうっ・・・アスカの意地悪・・・・」

移動中に頬を膨らませて、アスカを睨むのであるが、顔中とろけきっているが ためいつもの氷のような迫力は全くなかった。

「冗談じゃないわよ。あんないちゃつき見せられるあたしの身にもなってよね 。もう・・・くっそ〜・・いいなあ・・・・」

「・・・・アスカも渚くんに甘えたらいいじゃない・・・・優しいんでしょ・ ・・・」

自分がカヲルに甘える・・・・・レイみたいに・・・・・・

体の芯から熱いモノがこみ上げてくる感覚が、アスカを貫く。

「そ、そんな事・・・・で、出来る訳・・・・ない・・・じゃ・・・ないの・ ・・・」

「・・・・・そうかしら・・・・・でも、体温の上昇が感じられるけど・・・ ・・」

とろけきった表情のまま、レイは冷静にアスカの身体変化を述べるのであった 。

「っと、とにかく、テスト。着替えて急がないと・・・・・」

自分がカヲルにベッタベタ甘える姿、という妄想に取りつかれたアスカではあ るが、当面のテストに気持ちを切り替えようと必死になっていた。


そしてテスト。

その最中。

「いんやあ〜、キャットやるわねえ〜、驚いちゃった。」

ホルスタイン・ミサトが驚愕する。

「ホントね。これが演技なら素晴らしい役者だし、地だったらあたしたちは、 まんまと騙されていたって事ね。」

クロコダイル・リツコは冷静だ。

「・・・・・不潔・・・・・・・」

フライ・マヤはいつもの通り。

「でも、その甲斐あったみたいだわね。アスカはテスト上の空だし、レイはヘ ロヘロでど〜にもならないし。」

「もう、少し搦め手でジワジワ行く方がいいみたいね。基本的な性格はミサト によく似てるけど、流石にあっちの方は14歳だからミサトみたいにはいかない わ。」

「葛城さんみたいって・・・・・どんな感じなんですか?」

マヤがリツコに興味深げに尋ねる。

「どんな感じも何も・・・・・男を密室に連れ込んでバッと自分の服脱いでガ バチョと襲いかかるだけだもの・・・・感じもへったくれもないわよ。」

「失礼ねえ〜、それは加持の奴があんまり動かないから、業を煮やしてそうし ただけじゃないの。誰彼そんな事してる訳じゃないからね。」

「葛城さんって・・・・アクティブなんですね・・・・・」




そこへ、テストを終えたチルドレンがプラグから降りてきた。

「おおっ、シンちゃんがレイの所に駆け寄る所だわ。」

「アスカも眼を皿みたいにしてるわね。血走ってるわよ。」

「レイちゃんのあの嬉しそうな顔ったら・・・・・いいなあ、わたしも誰かい い人・・・・・・」

「あらまあ、あんなとこで抱きしめ合っちゃって・・・・・しかし、レイって ああしてシンちゃんに抱きしめられる度に、ビクビク痙攣するのねえ。もしかし て凄まじく感じやすい体質とか?」

「う〜む、可能性は有るわね。感じやすい上に大好きなシンジくんに抱きしめ られる・・・・よく気絶するのも分かる気がするわ。」

「でも、ビクビク痙攣しながらも、気絶はしてないみたいですね。」

「控え室でも同じような事してた筈だから、少しは慣れたのかしら。」

「何か囁いてるみたいだわ。おっ、レイの顔がペンキ塗ったみたいに真っ赤に なったわよ。」

「アスカも真っ赤です。レイちゃんが何か叫びました。」

「ありゃりゃりゃ、堪えきれなかったかあ・・・・・」

レイはシンジの腕の中で、失神ノック・アウトしてしまった。

恐らく彼女の中では、既にアスカヲルの事などど〜でもよくなっている事であ ろう。



レイが失神してしまい、シンジが付き添っているため、テスト後のミーティン グはアスカ一人で行われることになった。

「はあ〜驚いた。」

開口一番アスカは言う。

「プラグ降りたかと思ったら、またイチャイチャしだしてさあ、レイがまたピ クピク痙攣したかと見てたらシンジがこんな事言ったのよ・・・・・・プラグ・ スーツってさ、まるで裸でいるみたいだね・・・・・なんてさ。そしたらさあ、 レイの奴急に色っぽい声で、ああ〜〜んなんて叫んだと思ったら気絶しちゃうん だもん。いやあ〜、びっくりしたわ。」

ジッとアスカを観察していたリツコは思った。

(ふふん・・・相当、気になってるようだわ。この調子で外堀を埋めていけば 、カヲルくんが帰ってきた時が見物ね・・・・)

「アスカには目の毒だったわね。カヲルくんが第二新東京に出張じゃなければ 、アスカも負けずにイチャイチャできたのにねえ。」

「そうそう、あたしだったらもう、我慢できなくって・・・・・・・」

「アスカは今日散々だったのねえ。わたしたちは離れてたからまだいいけど、 アスカの目の前でだもんね。」

アスカは首を振りながら、仕方ないといった表情で、

「まあ、あいつらはもう婚約しちゃってるんだから、イチャイチャしてもいい けどね・・・・・でも、なんであたしがカヲルとイチャイチャしなけりゃいけな いのよっ・・・」

思い出したように、顔を桃色に染めて怒鳴るアスカ。

ミサトが手をヒラヒラさせながら言う。

「まあまあ、その件は置いて於いて・・・・それより、アルコール中毒の後の データってMAGIに入っていないから、ゆっくりテスト続けたいのよね。アスカし ばらくネルフに泊まり込んでくれない?」

視線を彷徨わせながら、アスカは答える。

「ん〜、ああ、いいわよ・・・・」

「じゃあ、今日はもういいわ。部屋で休んで・・・・・」

「へ〜い・・・・」

アスカはテクテク去っていく。

姿が完全に見えなくなってから、リツコがぽそりと呟く。

「軽い仕掛けくらいしてあるでしょうね・・・・」

マヤが、これもまたぽそりと答えた。

「もちろんです。ごく軽いのですが・・・・」

ミサトも、地の底から湧き出るような不気味な含み笑いを洩らしつつ、言った 。

「ぐひゃひゃひゃ・・・軽いのでも、ず〜っと続けば効いてくるからねえ・・ ・・・」



発案者のレイとシンジを欠いた作戦部隊は、それでもなお意欲満点であった。






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