レイ・リターン

製作 越後屋雷蔵

プロト・タイプ18


わたしは困惑している。

朝、起きたら碇くんが虚ろな眼をして、なにか言ってたの。

わたしはホントは寝起きがよくないの。

眼を覚ましてからしばらくは、眼が覚めていない状態で記憶がどうも曖昧にな ってしまうの。

そんな訳で、碇くんがわたしに何を言っていたのかわからなかったの。

でも、なんだか碇くんの様子が変。

眼が精神をやられて廃人に近くなった時のサルのよう。

ハッ・・・

もしかして、碇くんはわたしの体を見てあんなになってしまったのかしら。

前の夜、わたしはあの本の通りに裸になって、碇くんの横で眠った(気絶した )はず。

ならば起きて最初にわたしの裸を見ているだろう。

わたしは困惑している。

わたしは醜いのだろうか?

醜いわたしの体を見て、碇くんはあんなになってしまったのだろうか?

今、碇くんは部屋になだれ込んできたミサトさんや赤木博士に、病院に連れて いかれた。

わたしは一人部屋に残って考えている。

わたしは醜い?・・・

碇くんをあんなにしてしまった?・・・

やっぱり、わたしは戻ってくるべきではなかったの?

涙が出てきた。たくさん・・・

声が聞こえる・・・

あ、わたしの泣き声なのね・・・

「あ〜ら、レイ。泣いてるの〜。そりゃ、嬉しいでしょうねえ。けけけ・・・ 」

なにがうれしいの?自分が醜くって・・・

牛は嫌い・・・けけけが嫌・・・いきなり入ってきて嫌味を言うなんて・・・

「でも、よかったわね、レイ。あんな状況だけどさあ、一応きっちりプロポー ズされた訳だからねえ。うれしい時は笑うもんよ。」

ミサトさん(牛)が優しく微笑みながら、わたしの肩を抱いてくれた。

でも、わたしはもっと困惑していたの。

プロポーズ?

プロポーズとは、結婚の申し込みをする事。

誰が?

わたしに?

え?

「あん、やだ、レイ。あんた聞いてなかったんじゃないでしょうね。シンちゃ んのプロポーズを。」

わたしの困惑はもろに顔に出ていたみたいだった。

「・・わ、わたしは・・実は・・寝起きがよくなくって・・・」

碇くんが・・・プロポーズ?・・・

「・・・・・すっげ〜、間抜け・・・いいわ、来なさい・・・」

牛はわたしの手を引っ張って、部屋の外へ出た。

ズルズル引きずられていくわたし。

どどどどどどどどど

地響きがするの。なにか凄い勢いで近づいてくる。

あ、サルだわ。

「ファーストお〜、あんたあ〜・・・・」

「アスカ、この娘、肝心のとこ聞いてなかったらしいのよん。あんたも一緒に 来て。」

牛がなにか叫ぼうとしていたサルに、一言言ってサルの腕も掴みわたし同様引 きずっていくの。

行った先は小さな会議室。

「さあ、レイ。これを見るのよん。」

牛はポケットからディスクを取り出してセットする。

スイッチオン。

画面が明るくなり・・・・・・・

映像が流れる・・・

あっ・・・

・・・・

・・・

・・




ここは医務室。

リツコ、ミサト、アスカの三人が椅子に座っていた。

「まったく、この子たちにも困ったものね。」

「まあ、いいじゃないの。初々しくっていいわあ〜。」

「でも、どうすんの。あたしたちまだ14歳なんだから、いきなり結婚なんて 言ってもねえ。あのコンビで大丈夫なのかしら。」

奥のベッドで問題の二人は眠っている。

衝撃の告白をぶちかまし、その衝撃で自らが錯乱して薬で眠っているシンジ。

衝撃の告白を映像で見て、感動のためなのかはたまた直の告白を覚えていなか った衝撃なのか、完全に石化して硬直したままのレイ。

三人の視線が、この楽しいコンビに集中した。

「まあ、レイの返事待ちかしらね。状況的には絶対嫌とは言わないだろうけど ・・・」

リツコがそう言った時、部屋のドアが開いてカヲルがやってきた。

「やあ、お三方お揃いだったんですね。」

相変わらずの怪しい笑顔。

「レイちゃん、よかったですねえプロポーズされたなんて・・・僕もプロポー ズしてみたいですねえ・・・ふふふ・・そういえば、リツコさんやミサトさんは どうして結婚しないんです?」

怪しい視線が三人の美女、美少女に注がれる。

なにやらこの手の話題は嫌いらしいリツコが言う。

「ふふん、プロポーズでもネギボーズでもしてみたら・・・相手がいるならね ・・」

「まあ、相手うんぬんよりあたしたち二人の前でそんなことぬかすとは・・・ くっくっくっくっく・・・・良い度胸してると言うか・・・」

「そうね、まあ無知の罪と言うか・・・」

「キジも鳴かずば撃たれまいと言うか・・・・」

ゆらりと立ち上がるビューティフル・サーティーズ。

アスカは蒼い顔して、カヲルに視線で逃げろと合図するが、鋭いのか鈍いのか 分からないカヲルはきょとんとした顔をアスカに返すだけだった。

「カヲルくんには、是非とも教えておきたい事があるわ・・・」

「そうそう。きっちり覚えておいてもらわないとねえ。」

がっしり両腕を掴まれ、引きずられて連行されるカヲル。

「え?なんです?どうして?????」



こめかみを押さえてアスカは呟く。

「よりによってこんな状況で、あのセリフを言う?もう死なない事を祈るのみ ね。」

もうあの二人は止められない。




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