アスカ・アナザー

製作 越後屋雷蔵


ここは太平洋上。

空母オーバー・ザ・レインボー。

潮風の吹く甲板に、彼女は立って目的地を見つめている。

彼女の名は、惣流・アスカ・ラングレー。

「・・・・・・・・碇シンジ・・・か・・・・・・」

彼女はエヴァンゲリオン弐号機専属パイロット。セカンド・チルドレン。

金色の髪、蒼い瞳を持つ14歳の美しい少女であった。

「・・・・ほうっ・・・・・・・」

歳の割に妙に色気たっぷりの溜息をついている。






「あたしが日本に?」

アスカは不思議な顔でネルフ・ドイツ支部長の顔を見つめる。

「そうだ。私としては君を本部に行かせるのは不本意ではあるが、使徒は本部 を集中的に狙って襲撃しているため、仕方のない事なのだ。」

支部長は苦虫を噛みつぶしたような表情で吐き捨てる。

「でも、本部には二人チルドレンがいるはずですが・・・・・」

「ああ、いるはいる。だが、ファースト・チルドレンはまだ専属の零号機を起 動するかしないかだし、サード・チルドレンは就役したばかりでまだ慣れていな いのだ。だからこそ、君が必要らしい・・・・・・」

「少し考えさせてください・・・・」

「うむ、いい返事を期待しているよ。これはチルドレンのデータだ。目を通し ておいてくれ。」

「はい。」

アスカはデータの入ったMOを受け取り、自室に戻った。

端末を操作してデータを見るアスカ。

ファースト・チルドレン綾波レイのデータが表示されていた。

「綺麗な娘。過去の経歴は抹消済み?ふ〜ん・・・・・」

次のファイルを表示する。

サード・チルドレン碇シンジのデータだ。

シンジの顔の画像がモニターに現れる。

「!!!!・・・・・・・・」

アスカの身体を電流が走ったような衝撃が貫く。

「いや〜ん・・・・かわいい・・・・・えっと、同じ歳なんだ・・・・総司令 の息子なのね・・・・あら、もう一体使徒を殲滅してるんだ。暴走?・・・・・ そっか、慣れてないって言ってたもんね・・・・・あん、身体が熱くなってきち ゃった・・・・・」

モジモジしながらモニターを見ているアスカ。

キーボードを操作して、シンジの画像をプリント・アウトする。

出てきた画像を持って、辺りをキョロキョロ見回してから一目散にトイレに駆 け込んだ。

何故か、頬を桃色に染めながら・・・・・







彼女の眼には、ついこの間まで同僚だった葛城ミサトと三人の少年の姿が映っ ていた。

だが、視線は唯一人の少年だけに注がれている。

潮風の突風がアスカのイエローのスカートを盛大に捲り上げ、やたら色っぽい デザインのパンティを披露する。

ほほうと感心したような表情のミサトと、衝撃のため固まる三人の少年。

捲り上がったスカートを意に介さず、アスカはツカツカと歩を進めて一人の少 年の前に立った。

しっかりした意志を持った視線だが潤んだ瞳で、ジッと少年を見つめるアスカ 。

「あなたがサード・チルドレン、碇シンジね?」

「そっ、そうですけど・・・・・・」

これほどの美少女に見つめられる経験なぞ持っていない碇シンジは、ついドギ マギした受け答えをしてしまっている。

「あたし・・・・セカンド・チルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ。よろ しくね。」

アスカはそう言うと、シンジの顔を両手で抱えていきなり強烈なキスをお見舞 いしたのであった。

ブッチュウ〜・・・・・・

長く激しいキスであった。

イヤ〜ンなポーズで固まったままの二人の少年と、白目を剥いて失神する少年 。

「アスカ・・・・・どうしちゃったの?あんた・・・・・」

葛城ミサトは訝しげに尋ねた。

彼女が知るアスカは、いきなりこんな事をする少女ではなかったからだ。

「どうもしないわよ。・・・・・・一目惚れなだけよ・・・・・・」

流石に多少の照れもあるのであろう、頬を染めながら答える。

「マジ?」

信じられないと顔にはっきり書いてあるミサトの表情を見て、アスカはムッと しながらも、

「もう、身も心もとろけちゃってるの・・・・あたし。」

はっきり言い切ってしまうアスカであった。

「もしかして・・・玉の輿狙ってる?」

「玉の輿?ああ、総司令の息子だから?まさか。」

「じゃあ、なんで?」

「ミサトねえ・・・・自分を基準に他人を計るもんじゃないわよ。純愛よ、純 愛。もう、あたしはシンジしか目に入らないわ。」

「一目惚れっていう言葉が一番似合わないと思っていたのになあ・・・・・」

ミサトはニヤリと笑うと、衝撃の一言を炸裂させた。

「シンちゃん、今あたしと一緒に暮らしてるって知ってる?おまけにシンちゃ んファースト・チルドレンが気になってるみたいだし〜・・・・」

アスカはひどく驚いた顔でミサトに詰め寄った。

「なによっ、それっ。そんなのデータ・ファイルに載ってなかったわよっ。」

ミサトは平然とした顔で言い切る。

「だって、最近だもん。同居もそうだし、レイの事シンちゃんが気になりだし た様子になったのもね。」

アスカはギリギリ歯を食いしばりながら、

「うぬうっ・・・・・・」

と唸る。

「この間の作戦の後なんかもう・・・・・・仲良く肩なんか組んじゃってさあ ・・・・もう親密うっって感じ・・・・・」

非常に楽しそうなミサトに、アスカは

「覚えてらっしゃいっ・・・・」

と訳のわからん捨てセリフを吐いて歩き去っていった。

「・・・・で、どうするの。この子たち・・・・・」

後には、固まったままのトウジとケンスケ、鼻血まで出して失神しているシン ジと呆れ顔のミサトが残されたのであった。






その後、何を狙って来襲したのかわからないが、襲ってきた使徒をアスカの乗 る弐号機が迎撃した。

結果は、殲滅に成功。

内容は・・・・・・きっと八つ当たりもあったのだろう、使徒が可哀想になる ぐらいこてんぱんにしてやったのであった。

なにせ、爆発する暇も無いほどの波状攻撃だったのだ。

この手の話に出てくる使徒は、まったく立つ瀬がない。

合掌・・・・・






(ふんっ、あんなおばさんと同居くらい、なんって事ないわ。後はファースト ね。見てらっしゃい。必ず、シンジのハートをこの手に掴んでみせるからっ・・ ・・・・)




NEXT


inserted by FC2 system